狂児は聡実のうなじに唇を落とし、後ろからがっしりと回した腕で聡実の腹をゆっくりと摩った。うっかりしているとその手つきにまた欲情してしまいそうな自分がいる。狂児の腕の中からなんとか抜け出そうとした瞬間、まるで一緒になって抵抗の意を示すみたいに、ぐぎゅるるるる……と腹の虫が大きな鳴き声を響かせた。
「…………えっ」
「……なんや、今の……」
「で……っかない!? 今まで聞いた聡実くんの腹の音ン中でいっちゃんデカかった、絶対」
めちゃめちゃ元気やん! とまた腹を摩られる。けれどもその手の動きは急に面白おかしくなって、狂児は聡実の腹筋をぺちぺちと太鼓みたいに叩いて焼けに楽しそうだ。またその気を催してしまいそうだから逃げようとしたはずなのに。一瞬孕んだ色がさっと消えた瞬間、すこし残念に思ってしまった自分がいて、ほとほと呆れる。
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