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    setsuen98

    @setsuen98

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    setsuen98

    ☆quiet follow

    🌊🔮と言っていいのか怪しい何か。
    🔮に告白された🌊の話。
    🌊が割と最低というか、人としてどうかと思う感じです。

    #suuki

     浮奇が私に告白してくれたのは、半年ほど前のこと。

    「すき。スハが、すき…俺の唯一になってほしい…、…スハの、恋人になりたい…」
    空気に溶けてしまうような、か細く震える声。

     いつもの妖しく蠱惑的な様子は一片も無く、ただ懇願するだけの、拙い告白。細い指がお腹の前で絡むように硬く握られるのは、まるで祈るようで、浮奇の心の内を表しているようだ、なんて。
     だけどあの時の私は思いもよらぬ告白に困惑するばかりで、何か答えなきゃ、という思いだけで口にした言葉は、最低最悪のものだったと今ならわかる。
    「本気?浮奇と私は、そういうのじゃないでしょう?」
     今までのやりとりは浮奇なりのお遊びで、私もそれに乗って二人で楽しんでいただけ。そこには、恋愛感情なんてものはないと思っていたのに。ただ、突然の事に驚いただけで、疑っていたり嫌悪している訳ではないと浮奇に伝わるには言葉数が全く足りていないことに気付く余裕が、この時の私には無かった。
    「ごめんね、」と絞り出すように告げられた言葉は先の告白より大きく響き、忘れてくれと続ける声音は今までのやりとりが嘘のように、いつもの柔らかく、優しく潤った声音に戻っていて。
     それに答える間も無く踵を返す浮奇を追いかけることも出来ず、情けなくその場にたたずむ事しかできなかった。


     それから浮奇は今まで通りに私に接してくれた。
    コラボの誘いをかければ応じてくれたし、ゲームのプレイ中に私を惑わすことを言って、楽しげに笑いながらチャットを盛り上げる。
     元に戻ったことに安堵すると同時に、本当に忘れてしまったかのような振る舞いに、やはりあの告白は本気ではなかったのではないかという疑いすら湧いてくる。ただ、あの日の浮奇の声や表情が頭をよぎった瞬間、決して嘘なんかじゃないと否定が浮かぶ。
     事あるごとに頭の中が彼の麗人で埋め尽くされる日々。一度気になり始めると、些細なことでも関心を奪われ心が波立つ。

     私を好きだと言った口で、他の男に甘い言葉を捧げる。私を唯一にしたいと願った口で、俺は君だけのものだよ、と甘えてみせる。

     そんな姿を目にする度、思わず舌打ちをしたくなってしまう。さらに正直に告白すれば、何度か実際に舌を鳴らしてしまったことも、気に食わないやりとりを見せつけてくる端末を、乱雑にベッドに投げ捨てたことすらあるのだから、我ながら大人気ない。

    浮奇は私のものなのに

     そんな考えが浮かんだ日、ようやく私は自分が嫉妬していたことに気がついた。「ああ、そっか、これが嫉妬かぁ…。」と口にすると、じわじわと口端が上がっていく。これが子供じみた独占欲なのか、違う何かなのかも分からないまま、端末を手に取り数度タップする。
     今なら浮奇の気持ちに応えられる。喜ばせてあげられる。私だけが、浮奇を手に入れられる。
     数度響いた呼び出し音が途切れ、そっと差し出されるような柔らかい声が鼓膜を揺らすと、心臓が大きく震え、しとどになった布を力一杯絞るかの如く引き絞られた。今までにない自身の顕著な反応に思わず笑ってしまう私を訝しむ浮奇の声に、一層笑いが滲む声音のまま、世紀の大発見をしたとばかりに告げる。

    「突然ごめんね。あのね?私、たった今気付いたんだけど…最近ずっと嫉妬してたんだ。浮奇が他の人といちゃいちゃするのがいやみたい。これが恋なのかはまだわからないけれど、前は気にしてなかったことにも嫉妬するくらい、浮奇のことが大好きになったよ。…あ、元々大好きだったけどね!?でも、なんか…ちょっと形を変えたみたい」
    「…そう」
    「だからね、今更かもしれないけど、浮奇の唯一にしてほしいなって…そうすれば嫉妬でもやもやすることもないし、浮奇のお願いも叶えられるでしょ」

     電話の向こうの君はどんな顔をしているんだろう。呆然?驚き?喜び?幸福?
     スピーカー越しに聞こえた吐息に、どんな言葉が紡がれるのかと耳をすませた。

    「いらない」
    「…え?」
    「その程度の気持ち、いらないって言ってるの。そんな形も定まらない、得体の知れないもの…スハがなんなのか分からないようなものを、俺に押し付けないで」
    「ぁ、…え、でも…、その、浮奇は…私が好きなんだよね…?」
    「…俺の恋心はね、あの日傷ついて、じわじわ死んでいって、とうとう溶けて消えちゃったの。くらげみたいに」
    「…うき、」
    「だから、それはいらないよ。…じゃあね」






     一方的に通話を切って、大きくため息を零す。
    スハに嘘をついた。
     あの日、傷ついた恋心がじわじわ死んでいったのは本当。でも、消えてはくれなかった。
     俺の告白なんて無かったように振る舞われる度、泣きたくなるくらい傷ついた。でも言葉を交わす度また好きになって、唯一になれないことに苦しんで…まるでベニクラゲのように、何度も死んでは蘇り、育っていく。
     蘇った恋心は今も大きくなっているけれど、あの言葉に喜べる程おめでたい頭じゃない。

    俺の言葉が、どうかスハに小さな傷をつけていますように。

    傷から入ったポリプが、彼の水の中で育ちますように。

    はやく、俺と同じ“愛”が育ちますように。
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    setsuen98

    MOURNING🦁👟みたいな何か。付き合ってません。
     ほぼ満席状態の店内。二人掛けのテーブルにルカと向かい合って座ってから、なんとも言えない無言の時間が過ぎていく。と言っても実際には大した時間は経っていないけど、黙り込んだまま相手が口火を切るのをただ待つ時間は何倍にも長く感じられる。だからと言って、いつもの快活とした姿とは異なり神妙な顔でテーブルを見つめるルカに「話って何?」なんて無遠慮に本題へ切り込むことなんて出来なくて、手持ち無沙汰にカップに口をつけブラックコーヒーをちびちびと啜るしか出来ず、日差しが降り注ぐ外をいい天気だなぁ…なんて現実逃避まがいに眺めていた。
     「シュウに相談したいことがある」と改まって連絡がきた時は、一体何事かと身構えてしまった。まさかルカの身に何か深刻な問題でも起きているのかと心配になり即座に了承の返信を打てば、カフェでお茶でもしながら聞いて欲しいとの思いのほかゆったりとした回答に、勝手な杞憂だったのかと胸を撫で下ろしたのが数日前のこと。ただ実際に顔を合わせてみるとこんな風に一切読めない様子で、大きな問題でないことを願う最中、突然ルカが顔を上げ僕の方を見つめたかと思えば、また直ぐに視線を落とし何度か口をモゴモゴとさせてようやく口を開いた。
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