「重た…なに……?」
早朝、寝苦しさで目が覚めると知らぬ間に布団に潜り込んできた旬が背後から引っ付いていた。
今日は特に何もせず別々に寝ていたのに、だ。
夜中に急に家に上がり込んできて「ちょっと泊まらせてくれ」と言うから、翌朝の朝食を準備するのを条件に嫌々了承してやったのだ。
休日の朝ゆっくり寝て自動で朝食まで出てくるのならと許可してやったのに、まだ日も昇らぬ暗いうちに睡眠を妨害されて殺意が湧きかける。
昨夜ベッドを共にしたというなら、流れ的にもまだ同じ布団で寝るのは構わないと思わなくもない、だが今回はそうではない。
抱き留めようとする腕から逃れようと身じろぎするが、とても抜け出せそうになく、もがけばもがくほど力は強くなっていく。
(肉食植物系モンスターか何かか?)
体を動かしたせいでズレた毛布の隙間から冷たい空気が侵入して、その冷たさに身震いすると背後から起きかけ特有の掠れ声が聞こえくる。
「うごくなよ…さむい…」
そう文句を言うと共に、ズレた毛布を引き上げられて更にすっぽりと腕の中に収められてしまう。
確かに寒い、けど、だからといって人を湯たんぽ代わりにするのはどうなのか。
あたたかいのは確かだ、なんなら暑苦しいくらい、寝苦しくてたまったものではない。
結局日が昇り、セットしていたアラームが鳴っても、「さむいしねむい」と止められて、起き上りたくても馬鹿力の腕から逃れることが出来ず、いくら休日とはいえ遅すぎる時間にようやく旬の目が覚めて解放された。
旬は時計を確認しギョッとした表情をして酷い寝癖頭をさすりながらベッドから立ち上がり背伸びをする。
「うお…寝過ぎた……」
「この寝坊助が、泊めてやった条件覚えてる?」
「悪かったって、今なんか作る」
腹の虫はとっくに根を上げている。
少しは悪いと思っているのか申し訳ない顔をしながらいそいそと準備を始めキッチンへと向かう背中を見送って大きなため息を吐く。
僕の家を攻略拠点のように都合よく使うのをやめろと、何度言ったところでコイツはやめないのだ。
拘束されて凝り固まった体を思う存分くつろげると至る所からパキパキと骨の悲鳴が聞こえた。
(寝不足だし体痛いしまじで最悪だ)
ベッドの中はまだあたたかく、熱源が一つ居なくなったことで、程よく心地よい仕上がりになっていて、ついついそのまま毛布を被り浸りたくなってしまう。
とても朝食を作らせるだけでは気が済まないと夕食も要求してやることを決めて、キッチンから微かに聞こえてくる調理音に耳を傾けながら枕に顔を埋め瞼を閉じた。
その後
(朝飯できたなら起こせよ!)
(なんかいい感じに寝てたから起こしたら悪いなと思って)
(もう昼過ぎてんじゃん……っっ!!)