遡行ifその3 エランの伝手で杖や車椅子、そして食事メニューの決定権を手に入れたスレッタ・マーキュリーは、料理に凝るようになった。
スレッタ・マーキュリーについて、いくつかわかったことがある。透明人間となり家にはすぐに帰れなくなった、親しくない男の部屋から出られずに一日を一人で過ごす、という状況にあるにも関わらず日々を明るく過ごせる程度には能天気、もしくは空元気に慣れていること。この現象の原因に心当たりがありそうなこと。それをエランに隠していること。声を上げて笑うときに両手を添える癖があること。朝は寝ぐせがなかなか取れないこと。母親を尊敬していること。今年で二十歳であること。アスティカシア学園のOGであること。そのとき、学園で『エラン』と出会っていたこと。元は水星近傍のフロントでパイロットをしていたこと。働くことが好きなこと。あとは、トマトが好きなこと。ガンダムのことや彼女の伴侶のことは、まだ彼女の口からは触れられていない。
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