Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mumumumumu49

    @mumumumumu49

    4スレは信仰

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    mumumumumu49

    ☆quiet follow

    本編前4号くんの部屋に本編後スレッタちゃんがポップする話。冒頭だけ。
    昔twitterで見た設定の二番煎じ。続きが読みたくて読みたくて仕方がなかった。

    遡行if冒頭 強化人士四号──エラン・ケレスが軽い調整を終えて寮の自室に戻ると、ベッドの上に見知らぬ赤毛の女性が腰掛けていた。女はエランを見上げると、幽霊でも見たかのように目を見開き、一拍遅れて顔をくしゃりと歪めた。
    「え、えらん、さ……」
    「…………」
     ので、エランは一度外に出た。
     たまにあるのだ、こういうことは。対外的にはエラン・ケレスはベネリットグループの御三家がひとつ、ペイルテクノロジーが擁する次代候補の一人なのである。その内実がどれほど爛れていても、外側を飾り立てただけの人権など無いに等しい影武者であっても。知らない人間から見ればグエル・ジェタークやシャディク・ゼネリと同様に、喉から手が出るほど魅力的な足がかりなのだろう。時折、エランと親密になりたい客人が行く先の狭い空間に現れることがある。
     エランは生徒手帳を素早く取り出し、フロント警備部に部屋内の確認と侵入者排除の要請をメッセージで送る。実際に使っているのは影武者であるとはいえ、腐ってもペイルの筆頭の部屋である。本来なら室内カメラで登録者以外の入室をAIが検知すれば自動で警備部に要請が伝わるはずなのだが。
     すぐに送られてきた返信に目を通し、エランは柳眉を薄く寄せた。AIは部屋には誰も居ないと言うのだ。
     もう一度、自動ドアを開くと、やはり困惑した表情を浮かべる女性が存在しているように見える。特に襲いかかってくる様子はないので、今度はそのまま警備室に電話をかける。
    「KP002エラン・ケレス。寮自室内の確認を」
     慌てた様子の職員が映像を確認するのを待つ。しかし、返ってきたのは『異常なし』の回答だった。どうやら、他者を使うことはできないらしい。ため息を噛み潰しながら通話を切り、改めて女に向き直る。
     学生ではない──二十代前半だろう女性は、とても裕福とは思えない荒い生地の服を着ている。朱い肌は化粧っ気もなく、髪も手入れは最低限でひとつに括って横に流しただけ。素朴な雰囲気は富裕層ばかりのフロントでは地球寮以外で見かけない。先程まで地球で農作業をしていたと主張しても通るだろう。
     強く擦ったのか、目元を赤くさせた女が顔を向けたエランに話しかける。
    「あの、エランさん、ですよね……? どうして昔の制服を、ううん、また会えて、うれし」
    「悪いけど、ぼくはきみを知らない。興味もない。出て行ってくれるかな」
     エランにとっては当然の言葉だった。しかし、彼女にとっては違ったのか、ひどくショックを受けたような顔をした。それでもエランが視線で促すと、我に返ってのろのろとベッドのふちに手を掛ける。 
    「す、すみませっ、あっ」
     ベッドから腰を浮かせた女がカーペットにべしゃりと沈む。そのまま観察すると、どうやら両脚に力が入っていないようだった。
    「……脚、悪いの?」
    「……はい……」
     無視できないほどに、違和感は膨らんでいく。そんな人間が、何故エランの部屋に入り込んでいたのか。誰かに運び込まれた可能性を考えるが、意図が不明だ。カメラに映らないのは何故か。他の部屋ならいざ知らず、エランの部屋は実験台に影武者をさせている都合上ペイルも入口を監視しているはずである。温度センサーだって存在する。この体の不自由な女が、それを騙せるだろうか?
     来客のチャイムが鳴った。いつもならば居留守を使うところだが、今はそうもいかない。
    「そのまま居て」
     女にはそう言い残し、エランが自動ドアを開けると、来訪者は当然のようにアスティカシアの学生だった。ペイル寮の生徒だろう、少年は気の強そうな顔を気まずげに歪め、遜って見せる。
    「あの、すんません。サイン欲しいんスけど、寮長が留守にしてて……」
     エランは基本として寮の仕事をしない。ジェタークやグラスレーとは違い筆頭としての顔看板のみ担い、あとの寮に関する事務仕事は寮長に別の人間を立てて任せている。とはいえ筆頭としての建前、同等の権限は残っており、代理としての仕事が回ってくることはあった。
     体を少しずらし、学生から部屋の中が見えるようにしてから差し出されたタブレットを無言で受け取る。中身はイベントの火気取り扱い許諾書で、期限ギリギリではあるが内容はそれなりによく書かれていた。自分のものではないサインを書き入れて、他に回覧の必要な警備部にさっさとコピーを送付してからタブレットを返す。緊張している学生の様子に変わったところは見られない。
    「きみ」
    「ぅはい!?」
    「この部屋を見て、どう思う?」
     率直に訊くと、学生は恐る恐ると言った様子で殺風景な部屋を見回した。彼から見ても床に座り込んだ女性の姿はよく見えているはずだ。グラスレーではあるまいし、御三家の筆頭が女性を連れ込んでいるとなれば大した醜聞である。しかし、彼の目線はその一切を素通りして、おずおずとエランに向き直る。
    「えっと、片付けられてて綺麗な部屋、ですね……? 俺も、見習わないと」
     愛想笑いを残して逃げるように去っていく学生を意識から外して、再度エランは部屋に入る。
     そこにはまだ、泣きそうな顔でエランを見上げる哀れな女性が居る。間違いなく、そう、見えている。
     質の悪い冗談か、エランの脳が決定的に壊れたか。はたまた、時代遅れの幽霊か。どうやら、この人物は自分にしか見えていないようである。
     手袋をはめた手を差し伸べると、女性は不思議そうな表情を浮かべた。
    「……手を」
    「あっ、はい! ありがとうございます!」
     女性の手を握る。少なくとも触れるようだ。震える手は小さく、体温は高い。既婚者なのかシンプルな指輪を一つ填めている。体は軽いが、幽霊と呼ぶほどでもない。
     ひとつひとつ情報を拾いながら、女性の体をベッドまで引っ張り上げ、腰を支えて座らせる。
     離しかけたエランの手を、女性が両手で握りしめた。感じ入ったような表情で、大事そうに、祈るように。そして、微笑む。
    「やっぱり、エランさんは優しい、ですね」
    「きみはぼくに会ったことがある?」
    「スレッタ、です。スレッタ・マーキュリー」
     記憶にはない名だ。エランの持つ記憶は断続的だが、影武者を始めてからのことは覚えている。エランと呼ぶからにはこの容姿の記憶のはずだ。ならば、自分ではない、ご本人様か、他の影武者だろうと結論付ける。他の強化人士はまだ整形していないとは聞いているが、人倫にもとるペイルのことだ。他のプロジェクトでエランの知らない影武者の一人や二人こさえていてもおかしくはない。
    「お弁当を届けてもらって、一緒にエアリアルに乗って、決闘をして、誕生日をお祝いする約束をしました。覚えてない、ですか……?」
     自分に誕生日などない。間違いない、他の人物だ。
     エランが黙ってかぶりを振ると、スレッタは悲しそうに丸い眉を下げたが、すぐに首を振ってはにかむような笑顔を作った。コロコロと表情が変わる女性だ。
    「それでも、会えました。うれしいです」
     エランは少し距離を開けてスレッタの隣に腰かける。彼女にはまだ聞かねばならないことがあった。
    「きみはどこから来た?」
    「今は東アジアに住まわせてもらってます。お昼を過ぎてから預かっていた子供たちをお家に帰して、明日の授業の準備をしていたら眠たくなってきたので、夕方に仮眠をとって……気が付いたら、ここに居ました。あの、ここはどこですか?」
    「アスティカシア高等専門学園、ペイル寮のぼくの自室」
    「アスティカシア? どうしてエランさんが学園に……」
     どうしても何も、エラン・ケレスは学園かペイル社か、どちらかにしか存在しえない人物だ。エランには当たり前のことを不思議がっているスレッタの、その頬にはひび割れのような痕がある。その形状は、エランのよく知っている──GUND-ARMに呪われたものの証、GUNDによってパーメットに侵された際に生じるパーメット痕によく似ていた。
    「その模様……きみは」
     ──ガンダムに乗ったのか?
     問いは小さな音によって遮られた。出所はスレッタの腹部、原因はおそらく。
    「……おなか、すいてるの?」
     ハッとしたスレッタが頬を赤くして小さく頷いたので、エランはキャビネットの中から非常食の栄養バーを取り出した。味はいまいちで口の中の水分を根こそぎ持っていく代物だが高栄養価であることは保証されている保存食だ。こんなものでも食べないよりはマシだろう。
    「とりあえず、これ」
     スレッタに飲料水と共に差し出すが、彼女は受け取ろうとはせず、必死な顔でエランと栄養バーを見比べている。
    「……『いいんです、か?』」
    「どうぞ」
     そう促すとスレッタはようやく受け取り、覚束ない手つきで苦労しながら封を開けた。包装紙を剥き、小さな口でかぶりつく。口の端から、ほろりと欠片がシーツに零れ落ちるその上に、ぽたりと雫が落ちて染み込んだ。見れば、スレッタの蒼い瞳から涙が流れている。一粒、また一粒。そのまま両目からほろほろと大粒の涙を落としては、栄養バーを少しずつ齧っていく。
     緊張が解けたのか、泣くほど不味かったか。エランは訝しんだが、スレッタは栄養バーを食べきるまで、手放すことをしなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏💖👍💞💞💞😭🙏😭👏🙏😭❤🙏👏💗🙏🙏🙏🙏👏☺😭🙏💚❤💘🇱🇴🇻🇪👏😭🙏🙏🍀😭👏💕💚💕💚💕💚❤💚💗💚❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works