愛の遺言を君に捧ぐ1「俺は遺言を預かってる」
花道は息を呑んだ。まさか目の前のバスケ馬鹿――それも重度の――から、『遺言』なんて言葉が出て来るとは思わなかったからだ。ぬばたまの黒髪がさらりと流れたその下からは、意志の強い瞳がはっきりと花道を射抜いていた。
「……な、なんでだよ。なんでテメーが…」
「どあほう。とにかく俺は遺言を果たすぞ。いいか」
ずんっと踏み出した流川は花道の胸ぐらを掴んだ。今にも殴り合いが始まりそうな、一触即発の雰囲気だ。
「二人で出掛ける。俺とデートしろ……どあほう」
ロマンスのカケラもないデートの誘い。されど花道はそれを拒絶することはできなかった。今まで散々流川の告白をすげなく振り続けてきたが、今回ばかりは無理だった。だって花道は情に厚いのだ。
347