ウィークエンド/ワールドエンド(ファーベリ) プロローグ 週末の雨の下で
ガタンゴトン。電車の揺れる音が響く車両の中は、静かだった。ローカル線の、終着駅ふきんを走る4両編成の一番手前。休日の昼間にもかかわらず、乗客は数える程しか居ない。路線のもっと中ほどの、人の多い便利な街の駅で、みな降りてしまった。山を越えて県境まで届く終点に、週末のこんなにも明るい時間から、用のある人間はほとんど居ないのだろう。
電車の窓に、ポツリと水滴があたった。ポツポツと、雲に陰った空から雨が降ってくる。無人の座席に立てかけられた『傘』は、車両の中から雨の気配を察して、傘である自分を忘れて一人駅を降りた主人に思いを馳せた。
――雨が降ってきてしまったわ。私を電車(ここ)に置き忘れてしまったから、今頃ご主人さまは、雨に濡れてしまっているでしょう。
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