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    HaiNoYuki

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    HaiNoYuki

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    六太が街に出るとき、初期はアニメ万里景麒のような服装だったらいいな、から始まって、その服装でロングイヤリングしてたら最高に可愛い、っていう着地をした妄想。

    つまりは、尚隆と六太のデート話。

     出店のある広途(おおどおり)は人が盛んだ。荷を積んだ馬車が轍を進む音が聞こえると同時に、人混みが左右に割れていく。押されるようにして隙間に身を滑り込ませると、いらっしゃい、と声がかかった。尚隆が視線を上げると、宝飾店の店主が微笑んでいる。温和そうな年配の男だった。
     このご時世、まだ宝石を身に付ける程の豊かさはこの国には無い。尚隆はそう思っていたが、宝飾店の品揃えは想像以上に豊富なようだ。いささかこの通りには似つかわしくない格式高い品の数々は、素人目にもこんな場所で需要があるのかを心配する程にきらびやかに見える。
     並べられた商品のひとつに尚隆の目が止まった。小さな赤い石の連なった耳堕(みみかざり)。錫の台座が鈍く光っている。
    「それ、欲しいの?」
     目敏い連れが、尚隆の視線に気付き声を上げた。振り向くと、身長の低いその連れ──六太が、普段よりも幾分か顔を高くして尚隆を見上げている。目立つ鬣を隠すために上套を深くかぶっているので、視界の確保の為に苦戦しているらしい。
    「美しい細工だなと思っただけだ」
    「ふうん?」
     六太自身は特に目新しいものは見つけられないようで、商品を端から端まで一通り流し見るだけに留まっている。
     自ら何かを愛でたり粋だと感じる心には疎い割に、他人が感じるそれには敏感なのだ。そこに人と麒麟の隔たりを感じたが、尚隆は思考を追い払う。考えたとて詮ない事なのである。
     目を引いていた耳堕を手に取ると、尚隆の動きにつられて見上げてくる六太の顔前にかざした。右目を閉じ、距離をはかるように耳堕を前後させ、六太の顔と見比べる。
    「お前に似合いそうだ」
    「は?」
     戸惑う六太の眉が中心に寄るのを見て笑った。
    「買うぞ」
    「ちょっと待て」
     六太の制止の声も聞かずに、店主と視線を交わす。
    「このまま着けていく。良いか?」
     様子を見ていた店主は気前良く笑って頷いた。
     顔を隠す布の隙間から輪郭に沿うように器用に手のひらを差し入れて、六太の耳たぶを捕まえる。
    「うー」
     直立不動のそれから呻き声がするが、尚隆は意に介さない。
    「つけるなんて、言ってない」
     拒否の声とは裏腹に、体は尚隆の手に抵抗もせず棒立ちで、手から逃れるように背けた顔はむしろ反対の耳を差し出すように傾いている。尚隆は苦笑しながらももう片方に手を伸ばし、両の耳へそれをつけた。
    「いくらだ?」
     そうして懐から取り出した巾着から勘定を済ませた尚隆が懐に戻したところで振り返り、手のひらを上にして指先で六太の顎を掴む。上を向かせて右へ左へ顔を動かすと、ゆらゆら揺れるそれが煌めくのが見えて、尚隆は満足げに頷いた。
    「良いな」
     声を掛けると、六太の頬に赤みが差す。
    「莫迦」
     呟き俯く六太の表情は目深にかぶる上套によって見えなくなった。だが、六太の手がその隙間を縫って入っていく。おそらくその先には耳堕があると察して、尚隆は笑みを深めた。六太の反対の手を引き、広途の人通りがまばらになってきたのを見回す。
    「行くぞ。迷子になるなよ」
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