泡沫旅行さざ波と湿った風。日が昇ることのない宙。
君さえいれば、完璧なのに。
今も海の香りはしなかった。
あの世界は青く、遠く。
始まりと果ての海王星遠くで波の音。湿った風も。
でも、懐かしさを覚えなかった。覚えている懐かしい香りがしなかったから。大切な思い出とともに思考の深海に沈めるのならばどんなに良いだろうか。
そうやって自暴自棄になる前に行動する。あの日、アドバイスしたことも守れないなんて全くもって情けないな。だから、まず感覚を、次に身体を働かす。風を感じ、肩までのびた髪を揺らされながら、目を開けると強い光に包まれた。熱を感じない、人工的につくられたひどく冷たい白だった。見上げた僕の目に映ったのは宙の黒。
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