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    敷宇治

    ジョイアイを書いています。

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    敷宇治

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    1人で踊れるアインのジョイアイ
    第二次崩壊編のどこか軸

    時の流れ ヒールの音が軽やかに踊る。それを追うように踏みしめるような低く重みのある音が響く。……全くいつまでも君は、彼女に引っ張られる側なのかい?なんて少し笑ってしまう。それが彼のいいところと言えるけどね。
    「テスラさん、私と踊っていただけますか?」
    「失望させないでよ。ヨアヒムさん。」
     手を取り合い、始まった2人の時間。そこに僕もピアノを弾くという形で参加する。最初は先導するようにピアノを弾いていたが、今は2つの音の追いかけっこに寄り添うように曲を紡ぐ。僕の目は後ろにあるはずがないから、これは事実無根のただの僕の感想に過ぎないだろう。きっと幸せの音だ。 
     誰よりも強く優しく暖かい茶色の土に真っ赤で苛烈で熱い大輪の花が根を張ることでお互いを支え合う。どちらかが欠けていたら存在しなかった可能性であり、2人がいたら必然だった未来だ。羨ましいという気持ちさえわかないほど、その関係性は美しい。
     そうだろう?2人がいなかったら、今ここで僕がピアノを弾く未来すらない。今の僕がいるのも、2人のおかげと言えるだろうね。だんだん自身の思考に没頭しそうになるが、時計の針の音のように乱れのない一定の2つの響きによって現実に引き戻される。どうやら、こうやって考えている間でも、時は刻まれ、一定に進んでいるらしい。こうやって、考えている時間とピアノを弾いている時間と同じ時間を共有しているはずだが、時間の流れる速さに差異を感じるのだ。 
     そんなことを考えているうちに曲が終わり、僕は椅子から降りた。後ろを振り返ると、笑顔でお辞儀をする2人が見えた。僕に間違いはなかった。たしかに2人は幸せだった。 
     それからしばらく、アラハトの最終チェックや作戦の確認など、絶対に不備がないように、くまなく点検をした。これで後は、発射を待つのみだ。作戦決行までの少しの空き時間。僕は考えるともなく、ピアノがある部屋に向かっていた。あれから時間がたち、少し暗くなり、月も出ている。そっとピアノの椅子に腰掛ける。しかし、数時間前に見た光景を思い出し、椅子から降りる。なぜだか、2人がいた位置に行こうと思ったのだ。
    コン……コン…コン。
     自分が立った時に、鳴った靴音が響いた。ひとつだけ反響する音はなぜだか淋しかった。
    「だいじょうぶ。僕はひとりでも踊れる。」
     そう言って、彼女は踊った。彼女のまわりにあるのは薄い暗闇と沈黙だけだ。月あかりに包まれ、星に見守られていたが、彼女は変わらずひとりだった。人知れず咲く青い薔薇は舞い続ける。少し跳ねているよく晴れた青空の髪はターンする度に花弁が落ちていくように揺れる。そして、彼女が刻む音はなく、未だ沈黙が支配している。時が止まっているかのようだ。彼女の時間は確かに進んでいるのだが、次の時刻へと進めていないのだろう。時計の針が次の時の区切りへと到達せず、その時を保ったまま進み続けている。彼女はみんなと同じ世界の時の流れを生きているが、同時に失われた2度と戻らない「世界」との時も生き続けている。果たして、それが真実であるかはわからないが、彼女はひとりでだれかと踊っている。
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