あぁ、動悸が止まらない。
いつだって輝いている彼が羨ましい。こんな欠点だらけの自分と違って、太陽みたいなきみはいつだって世界の中心のようだ。そのおこぼれを寄せ集めて、やっと満足な呼吸をなんとかしているというのに。
「スグリ、大丈夫?」
彼が心配して手を差し伸べる。彼自体が眩しいのに、後ろで偽物の太陽も燦々と照らしている。そのせいで目が焼ききれそうになる。
「気に…、しないでよ」
思わず振り払ってしまった。スグリはわずかに後悔した。太陽へのお近づきのチャンスを無に帰したことを、ほんのちょびっとだけ、もったいない、と思ってしまった。
以前の小さな後悔があったから、今動けないのかもしれない。
ハルトの手が頬を触れる。重なり合ったところから、どくどくとあたたかな、それでもスグリにとっては毒と感じてしまうような熱が伝わる。
「やっぱり、調子悪かったんだ。 ゼイユも心配してたよ」
「…、ハルトもねーちゃんも、関係ないべ」
「そんなわけないじゃん。 みんな、スグリが心配なの」
人の厚意を無碍にする行動だと自覚している。けれど、どうしてもスグリはそんなことをしてしまう性分であることを気づくには時間がかからなかった。