京園⑨*
ああこれはまた都合の良い夢だ。この手の夢はもう何度も見ている。それこそ、彼女を初めて見たあの頃から、名前も知らなかった頃から何度となく見た。だからいい加減、分かっている。
これは、そういう類の夢だ。
しかし毎回、おおよそ同じような状況の夢だから、自分の想像力の乏しさを感じる。ベッドの上で、眠る為に横になっている筈の自分の腕の中に彼女がいる。柔らかくてあたたかくて、彼女の使っている整髪料なのかそれとも石鹸等の類なのか、甘い匂いがする。茶髪が鼻先を擽って頬擦りをしたくなる。
夢だと分かっているからといって、だから好き勝手に振舞おうという思考にはならない。もう何度も見てきたからこそ、この後の展開の事も、それに身を委せてしまった場合は目が覚めた後どうなるかも分かっている。それなら夢から覚めた時に虚しい気持ちになりたくない。
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