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    突貫工事

    #グラドフ

    酒は飲んでも飲まれるな 酒は本性を暴き、理性を失い、タガが外れやすくなる…とは、よく聞く話だ。
     とは言え、自分自身含め身の回りにそこまで酒に酔う人間がいなかったドフラミンゴには、イマイチぴんとこない話であった。今日この日までは。

     グラディウスの年齢も上がり、そろそろジュースではなく酒を飲ませてもいいだろう、と思ったドフラミンゴは、彼を自室へと招き酒を飲ませた。
     初めての酒でどうなるか分からない以上、一応念の為、彼の名誉を守る意図も含め、二人きりで晩酌をしたのだ。最初こそ緊張で固まっていたグラディウスも、酒が入り始めれば次第に緊張がほぐれていき、普段はあまり見ない笑みを浮かべ楽しそうに過ごしている。
     様子が変わったのは、ワインを一本半ほど開けた頃。それまではある程度会話が成立し呂律もしっかりしていたグラディウスが、次第に会話が噛み合わなくなり、もにゃもにゃ…と舌も回らなくなって行った。
     あぁ酔い始めたのか、少し早いなと思いながら一先ず水を飲ませようと席を立つと、とろとろと溶けた声色で「いかないで、わか」と引き止められる。
     普段ドフラミンゴの行うことに否定や静止を行わないグラディウスからのその言葉に、ドフラミンゴは一瞬動きを止める。体をかすかに揺らしながら、「いかないでください…そばにいたいです…」と繰り返すグラディウスに、「これが理性が無くなったということか」とドフラミンゴは理解した。
     普段とは全く違う様子を見せるグラディウスが愛おしく面白いとは思うのだが、それでもそのままにする訳にも行かず。「少し水を取りに行くだけだ、いい子で待てるだろ」と言って、ドフラミンゴは水を取りに一度部屋を出た。

     水を片手に部屋に戻れば、先程までドフラミンゴが座っていたソファーに腰をかけ、置いていったコートに顔を埋めるグラディウスが居た。
     んー、う…と、おそらく意味は無いであろう言葉を発しながらもふもふとコートを撫でるグラディウスが、余りにも普段とはかけ離れすぎていて。ドフラミンゴは、思わず笑ってしまった。
     コートの持ち主が戻ってきた事にようやく気付いたらしいグラディウスは、ハッとした様子で顔を上げ、「わか、申し訳ありません…」と、叱られる犬のようにしょんぼりとし始める。
     怒っている訳では無いのだから好きにすればいいだろうに、とは思うが、これに関しては普段から余り変わらないため、「気にしなくていい」と返し水を渡す。
     素直に受け取りちみちみと飲み始めるグラディウスの横に腰かけ、ドフラミンゴは彼に「したい事があるのなら、今なら応えてやってもいい」と言ってみた。
     普段ドフラミンゴに対してあまり自分の欲を見せないグラディウスが、自分がいない間にコートに触れて嬉しそうにしていたのが、存外気分が良かったのだ。自分のわがままを見せ、欲を出す今、彼が何を求めるのか気になった。
     ドフラミンゴからの言葉に、グラディウスは少し考え、そして「ハグをしたいです」と答えた。

     ハグをしたい。わかに撫でて欲しい。わかを撫でたい。俺はそれがすごく幸せで、だから、同じことをしたい。わかを愛しています。わか、ダメですか。

     酔ってとろりとした瞳を向け、子供のように強請るグラディウスに、腕を広げて見せる。
     言葉は無く、ただ言外に「お前のすきにすればいい」と伝えた。
     グラディウスはそれに対し少し躊躇いを見せたあと、グラスを置いてドフラミンゴに抱きついた。

     わか、若様。愛しています、心から。俺は絶対に離れません。あいしてます、大好きです。わかさま。わか。ドフラミンゴさま。

     何度も何度もドフラミンゴのことを呼び、不器用に撫でてキスを繰り返しながら、グラディウスはそう言い続けた。
     酒は本性を暴くらしいが、なるほど。グラディウスの本性とは、甘えたがりかつ甘やかしたがりなのか、とドフラミンゴは結論付けた。

     正確に言えば、成長し素直にドフラミンゴへの敬愛が脹れた結果甘えることが難しくなった為、酒に酔った今それが破裂しているわけなのだが。それはドフラミンゴの預かり知らぬ事であり、全て間違っている訳では無いので、問題は無い。

     閑話休題。
     グラディウスからの愛の言動は中々収まらず。キスは次第に激しくなり、頬や額ばかりだったソレはサングラスの下の目尻であったり、首筋であったり、グラディウスを撫でる手のひらだったり。とにかく多くの所へキスをして、そして柔く歯形をつけていった。

     ディアマンテさまが教えてくださったんです。愛する人には、こうするのがいいって。あとをつけるといいんだって、聞きました。わか、あいしてます。

     先程よりふにゃふにゃとした声色で、グラディウスはそう言った。
     おそらくディアマンテが教えたのは情事の際女につけるキスマークなどの事なのだろうが。グラディウスはドフラミンゴを愛している証として、何度も何度も、体のあちこちに跡をつけていく。
     そして胸元へ柔らかな噛み跡をつけた直後、電池が切れたかのようにグラディウスからはくったりと力が抜け、穏やかな寝息を立て始めた。どうやら酒が回りきって、眠ってしまったらしい。

     ドフラミンゴは一言も、グラディウスの愛の言葉に応えはしなかった。噛まれても抵抗はせず、そのまま受けいれた。きっと明日か明後日には完全に消えてしまう薄い噛み跡を、自身の指でそっとなぞる。
    「分かっているさ、グラディウス。お前が俺から離れないことは」
     眠るグラディウスの髪を撫でながら、一人ドフラミンゴは呟いた。


     翌日。寝苦しいだろうと服を全てぬがされドフラミンゴと同じベッドで寝かされたグラディウスは、昨夜の記憶を全て残したまま、ドフラミンゴにワノ国最上級の謝罪の姿勢を見せたのだった。
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