一線は超えずに。 くらり、くらり、世界が揺れ、視界が回る感覚。
「やべぇ……」
銃で撃たれたことによる発熱と出血からの貧血。キッドはそれらに耐えながら、路地裏を壁伝いに歩いていた。
汗と血が、地面に滴り落ちる。後で始末しとかねえと、とキッドは思いながら、ズルズルと壁を伝い、地面にへたりこんだ。
ぽつぽつ、ぽつり。雨が降り始め、キッドの身体に打ち付けた。これで証拠は流れてくれるだろうとキッドは思ったが、その反面熱に侵された体にはその雨は酷く冷たかった。
早く帰らないと、急く気持ちとは裏腹に、身体はどんどん重くなっていく。寺井に連絡しようとしたその時、誰かが近づいてくる足音がした。
敵かと、微かな力を振り絞り身構えたキッドの前に現れたのは、白馬だった。
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