🤍「………」
仕事帰りの帰り道。
1匹の黒猫と目が合った。
欧米では不吉なイメージも強い黒猫だが、日本では幸運を運ぶと大切にされていた時代もあるそうだ。
まあ、猫1匹に運が左右されるなんて、馬鹿馬鹿しいと思うがな。
にゃー🐈⬛
逃げる気配のない黒猫に近づこうとしたところで、たっ…と駆け出し、黒猫は細い道へ姿を消してしまった。
🤍「……」
💙「逃げられてしもたみたいやな」
くすくすと楽しそうな笑い声が聞こえてきて後ろを振り返る。
🤍「…イッセイ」
💙「同じ猫科同士とはいえ、やっぱり虎は怖いんやろか。ついこの間まではひよこちゃんやったんやし、怖がることないのになぁ」
🤍「うるせえ」
ふんっ、と顔を逸らし止めていた足を再び動かす。
そもそも、逃げられたからといって別に気にしている訳でもない。
ただたまたま、帰り道に黒猫が横切っただけだ。
💙「なぁなぁ知っとる?」
当然のように隣に並ぶイッセイに、何の話だ、と目を合わせることも無く続きを促す。
どうせ何を言ってもこいつの口が閉じられることは無いのだから、大人しく聞いておけばいい。
💙「黒猫って不吉なイメージが多いけど、日本ではラッキーキャットやー、いうて大切にされてたみたいやで?」
🤍「……」
つい先程、同じことを考えていたな、なんてぼんやり思いながら、否定も肯定もすることは無く足を進める。
💙「もしかしたら、何かええことあるかもしれん」
🤍「くだらねえ」
💙「あ、せやけど、俺に会えたんやから、これってもうラッキーなんやない?良かったやん」
🤍「………」
えー?なんや、否定せんの?なんて相変わらず話しかけてくるイッセイに、それ以上答えてやるつもりもない。
それを察したのか、やれやれ、と言ったふうに肩をすくめると、何かを思いついたように、ぁ、と声を上げる。
💙「せや、さっきの黒猫、クラリスに教えたったらええんとちゃう?」
🤍「そんな大したことでもねえだろ」
💙「みんなそんなもんやんか。じんたろうくんなんて、寝るぞーって呟いとったんやから」
🤍「………」
面倒だと思うものの、SNSの更新は大事だと、他のメンバーにもよく言われている。
伝えられる話があるときに投稿しておくべきなのかもしれない。
💙「それに、レオンの投稿なんていっつも短いし、大した内容ないやんか」
🤍「うるせえ…」
💚「あ!俺様にもどこにいたか教えろよ!」
🤍「あ?」
相変わらずの声量に眉を顰めつつ、何の話だ、とじんたろうを見る。
💚「黒猫だよ!さっき投稿してたじゃねぇか!俺もさわりてぇから教えろよ!」
🤍「ビビらせそうだから教えねえって言っただろうが」
💙「確かに、じんたろうくんのその声量やと、猫が驚いて逃げてしまうかもしれへんな」
💚「……!!」
むぐっ、と勢いよく口を手のひらで抑え、これでどうだ、とでも言わんばかりにこちらを見てきているが、どうせもって数秒だ。
💙「俺も場所知っとるけど、レオンが教えたない言うんやったら教えてあげられへんしな」
💚「俺だけ仲間はずれかよ!!」
🤍「そんなに猫に触りてえなら、野良じゃなくてもそういう施設に行けばいいだろうが」
💚「分かってねぇな。野良なのが良いんじゃねぇか!なんかかっけぇじゃん!!( -`ω-)✧」
💙「ははっ、じんたろうくんの価値観はよう分からへんけど、そんなら自分で探して見つけた方がええんちゃう?」
💚「(; ・`д・´)ハッ…確かにそれもそうだな。一理あるぜ!」
なら今からでも!と嵐のように走り去ったじんたろうに、思わず眉間のシワが深くなってしまうのはしょうがないだろう。
だがやっとあのうるせぇのから解放された。
💙「じんたろうくん、猫見つけられるとええな」
🤍「ふんっ、どうだろうな」