末っ子大好きトラッポラ家母親編
その日、クルーウェルは何度も鳴る電話と、今日から受け持ったクラスの名簿とを見比べながら大きく溜め息をついていた。教室で見掛けてからその瓜二つっぷりに二度見しかけたことは子犬どもにバレていないはずだ。恐らく、きっと。そしてそのソックリだった子犬と同じ名を持つ女性から今、ひっきりなしに着信が入っている。呼び出し音の限界を迎え音が途切れるも、またすぐに鳴り響くソレに渋々手を伸ばしボタンを押せば途端に『ディヴィス、遅いっ!』とのお叱りを受ける。
『もうっ、何度呼び鈴を鳴らしたと思っているの? レディのComeには2コールまでって教えなかったかしら?』
「……失礼、マダム。何せ俺も多忙な身でしてね。何処かのヤンチャな子犬の世話で手一杯なんですよ」
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