パンドラの箱神様、これから御前に立てた誓いを破ってしまうことをお許しください。
本当ならば古い映画のように告解室に入って神父様に全てを打ち明けたかったのですが、やはりこんなことは誰にも言えません。
私だって矜持があります。きっと今ほんとうに嫉妬に狂った醜い顔をしている筈です。そんな姿を人に見せたくありませんもの。
神様、思えば片手ほどの年月も経っていないんですのね。
私が彼と此処で式を挙げてから。
あの華やかな、信じられないほど華やかな、祝福されて笑顔に満ちた結婚式。
まるでシンデレラにでもなったような想いで未来の幸福を信じて疑わなかった私は、どれだけ愚かな女だったでしょう。
夫の笑顔は、何処か空虚なものでした。基本的にあまり笑わない人でしたから、そういう表情が彼の精一杯だと思っていたんです。
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