母失格あぁ、やっぱり彼の子ね。触り心地の良さそうなきれいな茶髪だわ。でも髪型が違うわね。もう少し伸ばしましょう?早く成熟しないかしら。
あぁ、やっぱり彼の子ね。寝顔がそっくりね。でも熟睡なんてしちゃだめよ。あなたも姫宮の子ですからね?早く成熟しないかしら。
あぁ、あぁ、やっぱり彼の子ね。優しそうな、人の良さそうな眉だわ。でもすこし動きすぎね。もう少し感情を抑えましょう?早く成熟しないかしら。
あぁ、あぁ、やっぱり彼の子ね。声が似てきたわ。でも少し口調が乱雑ね。もう少し上品になりましょう?早く成熟しないかしら。
あぁ、あぁ、あぁ、やっぱり彼の子ね。背格好が似てきたわ。でも少し服装がラフすぎるわ。もう少しかっこよく着こなしましょう?そろそろ成熟してきたでしょう?
あぁ、あぁ、あぁ!やっぱり彼の子ね!!キリッとした、透き通るような瞳だわ!!でもすこし明るすぎるわね!!心の奥底まで見通すような深さが足りないわ!!もう少し冷静になりましょう??もう成熟しきったでしょう??
ねえ?
ねえ??
ねえ!?!?
あの人の見た目で!!声で!!身長で!!そんな顔をしないで!!私のあの人の思い出を塗り替えようとしないで!!あの人はそんなに優しい顔しないの!!無邪気じゃないの!!どうしていつまでも純粋なままなの!?失敗して失望されてたじゃない!!どうしていつまでも前を向くの!?大好きなお兄ちゃんと比べられてるじゃない!!なんで!?ねえ!?ねえ!!
ねえ!
ねえ
ねぇ…
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…どうして…そんなに優しくするの……こんなひどい母に…
母ちゃんが凜冬と夢翔にしたこと、忘れられないでしょう……?
夢翔の大好きなお兄ちゃんに酷いことしてるでしょう……?
母ちゃんが大好きなお父さんとおんなじ見た目で、そんなに優しくしないでよ……お父さんが優しかった頃、思い出しちゃうじゃない……
何度逃げようとしたのかしら…その度に夢翔が笑いかけるから……無邪気に母ちゃんって呼びかけるから……置いていけないじゃない……
ねぇ…おねがい……
……私をあなたの愛から逃してよ