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    boooooolo

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    ギルラウレイを中心に妄想する垢。
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    ギルレイ習作2

    ##ギルレイ

    【ギルレイ】貴方の心臓が欲しい 求められるまま、まだ青い果実を差し出した。
     けれど、それは間違いなく、自ら望んだ行為だった。

     冷えた指先が背を撫でた。まだけだるさの残る身体に微かに灯った熱が煽られるように温度を上げる。
     ひどいひとだ。心を受け渡す気はないくせに、いつだって指先は愛しむような手つきで触れてくる。いいや、本心で、彼は自分を愛しんでくれているのだろう。きっと。だから余計に質が悪い。
     かぶる吐息が、たった数時間前の情景を思い出す。
     生理的な涙。潤んだ双眸に絡む眼差しは間違いなく自分のはずなのに、求められる姿は異なる誰か――否、『だれか』とは白々しい。それはただひとり。彼が求めてやまぬ存在でありながら、もう二度と交わることのできない相手であることは、はじめから明白だった。
     ずるいひと。ひどいひと。かなしいひと――いとおしいひと。けれど、きっと。それをわかりながら、なおも求められるままに手を伸ばし、己を穿つ熱を食らう自分もまた同じ穴のむじな。
     幾度か皮膚を撫でた指先がするりと背を伝い流れる。布擦れの音がすっかり乾いた寝室に響いた。遅れて、ささやかな寝息が耳朶に触れる。知らず詰めていた呼吸を吐き出し、音をたてぬようにそっと肩を返した。
     カーテンの合間から零れた月明かりが影を生む。自らの背を追い越した先。向き合うはずの身体は、けれど当然のことながらその瞳に背を映すばかりで。青白い月の光の照らす肌は、先まで部屋を満たしていた熱が嘘のようにただただ白く、現実味がない。
     重ね合わせたはずの熱はとっくに霧散し、幼いころからさほど変わらぬ距離がふたりの影の間へ居座る。
     不意に伸ばした腕を彼を習って背へ向け、やめた。
     ただ一度、空を掴むに終わった指を解き、白磁に流れる髪を掬う。
    「――たとえば」
     言葉を切り、息を吐いた。
     耳を澄ませば確かに届く寝息に胸を撫で卸、唇を開く。
    「俺がギルを愛していると伝えたら……ラウではなく、俺自身を抱いてほしいと言えば、ギルは――」
     問う言葉の先を、口にすることはできなかった。したくなかった。多分、想像することすら、心が拒んでいた。
     それでも、愚かな思考は、巡ることをやめやしない。
     肌を重ねる中。濡れた空気に零される名が、形を変えることを望んでいるとして。果たしてこの人は受け入れるのだろうか。それとも、また『正しい形』『あるべき姿』を求めてゆくのだろうか、なんて。
     梳いた毛先を絡めとり、閉じ込めるよう指を折った。瞼を伏せたところで、脳裏をめぐるのは、まったくもって自分らしくもない感情ばかりで。嘆息が喉を押し上げる。
     わかっている。自分はただ彼の代わりというだけで。それ以上でも、それ以下でもない。求められているのは、ただ彼であることだけ。
     けれどそれじゃあ、『レイ・ザ・バレル』という存在は、果たしてどうしてここにいるのか。
     育むというにはひどく薄暗い感情は、素知らぬうちに自分の中に欲を生み出した。
     絡めとった指を解き、背を向ける。肌を触れ合わせることはしないまま。ふたり身を沈めてもゆとりのある寝台の上で、レイは一人分の距離を開けて零れた月光をただ静かに見つめた。
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