①全てヒナタの夢の中の出来事であった(夢オチ)
「ぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
隣からの絶叫に近いような声にカナタは飛び起きた。何事かとバッとそちらへと目を向ける。そこには天井へと目を見開き、荒い呼吸を繰り返すヒナタがいた。額だけでなく首やわきにもじっとりと汗が滲んでいる。
「ど、どうしたのヒナタ?怖い夢でも見たの?」
顔を覗き込むようにして慌てて問い掛けると、みるみるうちにヒナタの瞳が涙でいっぱいになった。
「わっ!」
いきなり抱きつかれ思わず声を出す。またどうしたの?と聞いてもヒナタは嗚咽混じりによかった…よかった…などと繰り返すばかりで何があったのかカナタにはよく分からなかった。しかし何かしたいと手を伸ばしてぎゅっと抱き締めた。涙を流し続けるヒナタの体温は高く、カナタにもその熱が伝わる。そして、いつだったか母親がやっていたように背中に手を伸ばしてトントンと優しく叩く。一定のリズムでゆっくりと。ヒナタの言葉に寄り添うように大丈夫、大丈夫だよヒナタと声を掛けながら。
いつまでそうしていただろうか。鼻を何度も啜りながらヒナタが話し始めた。声は揺らいでいる。
「…カナタが何でかわからないけどどいなくなっちゃう夢を見たんだ…。それで…こわくなって…」
抱き締める手に力が入るのが分かる。顔は見れないがきっと悲しみで満ちているのだろう。言い終わった後も肩は震え、また鼻を啜っている。
「…ヒナタ、僕はどこにも行ったりしないよ。」
「ほ、ほんとうか…?」
抱き締めていた手を離してヒナタはカナタの顔を見つめた。その瞳は不安そうに揺れながらも輝いていた。
「ほんとうだよ。だってきっとヒナタも僕を残してどこかに行ったりなんてしないでしょ?」
「…!もちろんだ!オレはずっとカナタと一緒にいるぞ!」
その言葉にうんとカナタが微笑めば、ヒナタも涙を浮かべながら微笑んだ。
「ごはんできてるよー!はやくー!」
部屋の外から母親の声が聞こえ、慌ててベッドから下りる。お揃いのスリッパに足を入れて、手を繋いで扉を開けて。
「なぁカナタ、今日はなにして遊ぶ?」
「うーん。ヒナタとならなんでもいいよ。」
窓からは暖かな光が差し込んでいる。また何でもなくてかけがえのない日々が始まっていく。
②外部から見守っていた人(?)の話(バニシングツイン説をどんと入れている)
「あぁ…なんて可哀想に…。」
神さまは心がすれ違ってしまったことでそのどちらも辛い思いをしなければならなくなったこともたった一度の過ちで様々なことが変わってしまったこともとても悲しみました。片割れを天の星々の一つに加えなくてはならないことも悲しくなってしまいました。しかし神さまはいのちをつくることはできても失われたいのちをもとに戻すことはできません。それなら。
「そもそも2人を出逢わせなければいいのです。時間を巻き戻して2人一緒にではなく1人だけ生まれれば。」
しかしながらお優しい神さまは仲の良い2人が一度も逢うことができないまま一生を終えることとなることを不憫に思い、ほんの一瞬だけ一緒にいることのできる時間をつくりました。想定よりも仲が良くなってしまったため、急いで片方を神さまのいるところへと戻しました。あのような悲劇が起こることを防ぐためです。ですがそれがよくなかったようです。彼はいなくなったもう片方の代わりのようにぬいぐるみに執着し、誰とも本当の意味で仲良くできなくなってしまいました。
「いつかあのぬいぐるみ以外の大事な人が彼にできますように。」
神さまは小さく祈りました。
③あの話の続きをハッピーエンドにして書こうと思ったもののあまりにも重すぎるため書けませんでした
もしよろしければ想像で補っていただけると…