透明な水 3 それからの谷での暮らしはといえば、つまるところ、それまでの日々とはそれほど大きく変わりありませんでした。
ひとつ変わったことといえば、王の代行として執政の役割を果たすという仕事が、エルロンドにひとつ増えたことくらいです。けれどそれも、元々リンドンでは高官の立場にあったという彼にとっては、むしろお手のものでさえある様子でした。
アロンディルとヴォロヒルにとっては、王とガラドリエルという歯止めが居なくなったことで、ますます献身的に働き出したエルロンドを、あの手この手で倒れる前に寝かしつけるという、やたらに難易度の高い任務との闘いの日々のはじまりでありましたが。
くすくすと笑うヴォロヒルの声にハッとして、アロンディルがそちらを見やると、彼が微笑みを浮かべて見下ろす先では、草の上に寝転がったエルロンドが、目を閉じて穏やかに寝息を立てはじめていました。隣で仰向けに寝転がっていたアロンディルは、身体を横に向け、地面に肘をついて頭を支え、同じく彼の寝顔を見下ろしました。
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