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    tabechauzooooou

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    POIPOI 9

    tabechauzooooou

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    なんか続いたRoP S2のEP9という強めの幻覚。
    ドラマ版から妄想を膨らませてみたお話です。

    前回の続き…というほど話は進展せず、回想に終始しております。長いです。
    アロくん視点でみたロンドくんのあれこれ。
    ※若干香るギルエル風味。
    ※癒しの力についての設定などの色々は完全なる捏造です

    透明な水 2 エルロンドと共にエルフたちの治療にあたったアロンディルも、初めは治療を受ける側にあったヴォロヒルも、彼に目覚めた〝癒しの力〟のことはよく知っていました。ヴォロヒルに至っては、最初にその力の恩恵を受けた相手であったかもしれません。何しろ、ガラドリエルにネンヤの指輪を返したのち、谷で再会したヴォロヒルの傷を、どうやら無自覚に癒してみせたエルロンド本人が、誰よりも驚いた顔をしていたのですから。
     本人曰く「理屈がわからない」のだというそれは、身に覚えもなければ、元々備わっていたという類のものでもなく、特に思い当たる由来すらもないようなのです。おそらくは、ガラドリエルの傷を癒し、闇を祓った際、一時的に嵌めたネンヤの力を使ったことで、その膨大な魔力の一部なりがエルロンド自身の身に移ったのではないか、という見立てでした。
     理屈こそよく分からないものの、使命感に駆られた目をした彼は、特に深手を負っていたものたちの傷から優先的に、その力を用いて片っ端から癒やして回ったのです。
     そうしてエルロンドは、誰に命じられるでもなく、この谷における治療師の役目を、その後も自ら負うようになりました。そして、どこか危なっかしいところのある彼を、持てる知識を活かし補助することを選んだのもまた、アロンディル自身の意志でした。それから、任を解かれようとエルロンドの側近であろうとするヴォロヒルも同じく、己の意志でそうしていたのです。
     ただ、上級王ギル=ガラドやガラドリエルは、指輪に頼らず癒しの力を発揮するエルロンドを見て、顔を見合わせて何やら少し難しい顔をしていたようでした。

     谷間には、救援に駆けつけてくれたカザド=ドゥームのドワーフたちの第一陣が、何はともあれ一先ずの雨風凌ぎを、と、急拵えの天幕をいくつか用意してくれましたので、大方の拠点となる場所もできあがりました。継続的な治療を要する重傷者を集めた、一際大きな天幕も拠点の中心に据えられたのですが、そのほかにも、軍の野営地のごとくそこかしこに張られた天幕に、軽傷や中等傷の怪我人が散らばっています。その全部を、どうやらエルロンドはしっかりと把握し、彼らの怪我の具合に至るまでをも記憶している様子でしたから、アロンディルは正直なところ、彼のその仕事ぶりに舌を巻いてしまったほどでした。
     さて、その一方で、王として国や軍のこれからに頭を回さなければならなかったギル=ガラドは、治療の活動に加われない代わりに、青い指輪を一時的にエルロンドに持たせようとしました。ところが、一度は指輪を受け入れたはずのエルロンドは、どうしたことか、これには頑として頷かなかったのです。指輪を持たずとも癒しの力は使えるようだから、と言い張るばかりで、その頑固ぶりで王を呆れさせていました。
     自身の怪我の具合が良くなったガラドリエルも、時に治療の補助に加わることがありましたが、彼女もまた、ギル=ガラドと共にほかにやるべきことのある人です。彼らは本来ならば、エルロンドにもそちら側に加わってほしかったようなのですが、頑なになった彼は自分たちの言うことなどまるで聞きはしないのだと、半ば諦めたように、二人ともが口を揃えて言うのでした。だから、ガラドリエルがエルロンドを渓流へ投げ落としたのも、ある種の意趣返しだったのかもしれません。
     結局、それからすぐに王たちの懸念は的中し、休むことなく谷間を動き回っていたエルロンドは、あるとき突然、糸の切れた人形のように昏倒してしまったのです。元々白い顔は血の気を失っていっそ青くなっていましたから、アロンディルたちは大層あわててしまったものでしたが、いくらか平静を保っていた王の見立てによれば、命に別状があるような状態ではなく、溜まった疲労と力の使い過ぎで体力が底を尽きてしまったのだろう、ということのようでした。
     実際、それから三日三晩こんこんと眠り続けたエルロンドではありましたが、四日目の朝には何事もなかったようにケロッと目を覚まし、血色の戻った顔できょとんと皆を見回して、すっかり安心させてくれたのでした。
     アロンディルはこの時はじめて、彼が〝半エルフ〟という特異な存在であり、それゆえに本来は人間のようなしっかりとした眠りを必要とする身であることなどを知りました。
     王もガラドリエルも、起き抜けのエルロンドに滔々と説教を垂れていましたが、アロンディルは知っているのです。そんな二人ともが、しっかり目蓋を閉じて眠り続ける半エルフの頬を、髪を、それは愛おしげに撫でていたという事実を──。
     けれど、叱られている本人の反省を促すためにも、ここは黙っておくのが正解でしょう。秘密を共有するヴォロヒルとは、互いに目配せをして、ひそかに笑い合ったのでした。

     そんな中、ドワーフの救援部隊の第二陣を率いてやって来たナルヴィから、このままこの谷をエルフの新たな拠点として構えるつもりであるならば、しっかりとした建物をいくらか建てるべきだろうとの提言がありました。もしそうするのであれば、カザド=ドゥームのドワーフは協力を惜しまない、とも。この議論の場には、王の密命をうけたアロンディルとヴォロヒルが、やっとの思いで捕まえて来たエルロンドも参加させていましたが、気もそぞろだったくせに、その言葉に誰より目を輝かせたのは他でもない彼でした。ナルヴィが『ドゥリン王子からの言伝』だと言ったことも大きかったでしょう。だいたいナルヴィははじめから、『エルロンドに』これを伝えに来たのです。
     思えば上級王には、この時からもう、予感めいたものがあったのかもしれません。
     谷にはまだ動けない者も多くいるうえ、エレギオンを焼け出されたエルフたちは、明日を生きていくため、当面の生活の場を必要としていました。ですから、ギル=ガラドとガラドリエルは、言われるまでもなく、この安全で安らぎを与えてくれる美しい場所を、一時的にせよ永続的にせよエリアドールにおけるエルフの拠点のひとつとすることを、既に考えはじめていたようでした。そのためには、必然的に、ここを統める者を置く必要があるのです。
     遅かれ早かれ、リンドンに帰還しなければならない上級王はもちろんのこと、筆頭候補であろうガラドリエルも、守りに徹することになるこの役目を、努めるつもりなど毛頭ないようでしたから、王がそれを任せられる地位にある者など、ひとりしかいないことは明白でした。それでなくとも、この地でエルフはおろか訪れるドワーフたちからの信頼までをも得ている者など、誰の目にも明らかでした。
     ──けれど王は、(口にこそしませんでしたが)本音のところでは彼を、エルロンドを、共にリンドンへ連れて帰りたかったのでしょう。
     結局、拠点を置くことこそ王はこの場で宣言しませんでしたが、カザド=ドゥームの提案と支援は有り難く受け入れることとし、あくまでエレギオンからの避難民の生活と、負傷者たちの療養のため、居住館の建設を正式に彼らに依頼しました。
     この日を境に、あきらかに、不自然に王とエルロンドの距離が開くようになったとアロンディルは感じていました。そして、ガラドリエルもまた、考え込むように地図を眺めていたり、物憂げにひとり、谷からどこか遠くを見つめている姿をよく見かけるようになりました。
     
     ことが落ち着けば、ペラルギルのテオたちの様子を見るべく南へ戻ることを考えていたアロンディルは、その後に王の一団がリンドンへの帰還時期を決めたときも、それには同行せず、しばし谷に留まることを彼らに伝えました。ギル=ガラドもガラドリエルも、それを聞いて大層残念そうにしていましたが、アロンディルは、自分のいるべき場所はそこには無いと思うのです。ただ、彼らが一兵卒にすぎない自分との別れを、そうも惜しんでくれたことが、少しばかりこそばゆくもあり、また、素直に嬉しくもありました。
     さて、これを好機とみたらしいのは、近頃はすっかり行動を共にするようになっていたエルロンドでした。彼は、王に同行することを命じられる前に、真っ直ぐに王を見つめて、自身もアロンディルと共に谷に残ると言い出したのです。却下されたところで、従う気などさらさら無い物言いでした。
     長らく黙り込んだ王は、何かを言いかけてはやめ、また言いかけてはやめ、エルロンドの顔を見て、ついにはそれを承諾しました。ガラドリエルは、黙したまま結局一切の口出しをしませんでした。
     その日の夜、ギル=ガラドとエルロンドは連れ立って谷間の木立の闇へと消えてゆき、翌朝、陽が高く昇るまで戻ることはありませんでした。そんな晩が、王の出立の準備が整うまさに前日までのあいだ、幾度か、確かにありました。
     そうしていざ迎えた出発の朝、見送りに集まったエルフの一団の中に、エルロンドの姿は見当たりませんでした。ガラドリエルがいささか鋭い目を王に向けたように見えたのは、きっと気のせいであろうとアロンディルは思うことしました。
     密かにアロンディルを傍に呼び寄せた王から、例の密命を耳打ちされたのはこの時のことです。直後に、ガラドリエルからもまったく同じ密命を受けたのは、言うまでも無いでしょう。後から聞けば、ガラドリエルの方は、元はと言えば彼女の部下であったというヴォロヒルにも、アロンディルに与えたのと同じ密命を与えていたようでした。リンドンへ戻ることも選べた彼は、けれど、本人が拒もうとエルロンドの傍に仕えることを心に決めていたようでしたから。
     谷を旅立った王たちの後ろ姿が見えなくなるまで見送ったのち、一向に姿を見せないエルロンドを探してみたところ、予想外にも彼は、いつもの簡素な寝床に横たわり、身体を丸めて深く眠っている様子でした。それはとても珍しいことでしたから、身体から落ちかけた毛布を掛けなおしてやり、そのまま静かに寝かせておくことにしました。
     昼過ぎになってようやく目を覚ましたエルロンドは、ひどくぼんやりとして気怠げではありましたが、王たちがつつがなく出発したことを聞かせると、「よかった」と、落ち着いた様子でただ頷きました。寝床で上体を起こした彼のその膝には、一本の巻物が乗せられていて、剣を握るのには少し細い指が、そっとそれをなぞっていました。
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    tabechauzooooou

    DONERoP/さらに続いた第三弾。ここでいったん一区切りです。
    今回はちょっと舵を切って愉快な感じです。
    S2で物議を醸したあのシーンについて、自分なりにひとつ答えを出しておきたかった。
    ※オークの毒の作用とかについては完全に捏造です!!
    透明な水 3 それからの谷での暮らしはといえば、つまるところ、それまでの日々とはそれほど大きく変わりありませんでした。
     ひとつ変わったことといえば、王の代行として執政の役割を果たすという仕事が、エルロンドにひとつ増えたことくらいです。けれどそれも、元々リンドンでは高官の立場にあったという彼にとっては、むしろお手のものでさえある様子でした。
     アロンディルとヴォロヒルにとっては、王とガラドリエルという歯止めが居なくなったことで、ますます献身的に働き出したエルロンドを、あの手この手で倒れる前に寝かしつけるという、やたらに難易度の高い任務との闘いの日々のはじまりでありましたが。
     
     くすくすと笑うヴォロヒルの声にハッとして、アロンディルがそちらを見やると、彼が微笑みを浮かべて見下ろす先では、草の上に寝転がったエルロンドが、目を閉じて穏やかに寝息を立てはじめていました。隣で仰向けに寝転がっていたアロンディルは、身体を横に向け、地面に肘をついて頭を支え、同じく彼の寝顔を見下ろしました。
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    tabechauzooooou

    DONEなんか続いたRoP S2のEP9という強めの幻覚。
    ドラマ版から妄想を膨らませてみたお話です。

    前回の続き…というほど話は進展せず、回想に終始しております。長いです。
    アロくん視点でみたロンドくんのあれこれ。
    ※若干香るギルエル風味。
    ※癒しの力についての設定などの色々は完全なる捏造です
    透明な水 2 エルロンドと共にエルフたちの治療にあたったアロンディルも、初めは治療を受ける側にあったヴォロヒルも、彼に目覚めた〝癒しの力〟のことはよく知っていました。ヴォロヒルに至っては、最初にその力の恩恵を受けた相手であったかもしれません。何しろ、ガラドリエルにネンヤの指輪を返したのち、谷で再会したヴォロヒルの傷を、どうやら無自覚に癒してみせたエルロンド本人が、誰よりも驚いた顔をしていたのですから。
     本人曰く「理屈がわからない」のだというそれは、身に覚えもなければ、元々備わっていたという類のものでもなく、特に思い当たる由来すらもないようなのです。おそらくは、ガラドリエルの傷を癒し、闇を祓った際、一時的に嵌めたネンヤの力を使ったことで、その膨大な魔力の一部なりがエルロンド自身の身に移ったのではないか、という見立てでした。
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