罪の終わり、贖いの果て(2)「ホントウに?」
幼い自分の声が低く濁る。無垢な笑みが悪意を滲ませるのは、途方もなく醜悪だった。
これが、あの頃の自分なのだ。ドレスの裾を握りしめ、目を逸らしたくなる衝動と戦う。
神が未だに己の中に巣食っているのは、わかっていた。恩恵である読心の力――恐らくは母の機嫌を伺い、母の愛を求めたために授けられた力――は、変わらずマナと共にあったのだから。
「去りなさい。あなたに主導権を渡すつもりはありません」
「ホントウに?」
「本当です。わたしは、償いを諦めなど」
しない、と。断言するより先に、神が上目遣いに己を覗き込んできた。
「ホントウに?」
唇が震える。心の中で思い描いただけの自分の体が、悪寒を感じて縮こまる。
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