よくある話。休日前夜、俺は高速道路をバイクでかっ飛ばしていた。世界が未曾有の危機から救われたと言うのに、発生する人間の業に嫌気がさし、かといってどうする事も出来ない自分を慰める様に、時間があれば俺はバイクを駆った。
とある日、いつもの様に走っていると対向車線に赤いランプを見つける。警察車両だ。近付くにつれ、散らばる破片が目に付いて、俺は事故ったんだなと思った。そこのカーブは地元じゃ、ちょっと名の知れた色んな曰く付きのカーブでもあった。フェンスが一部切れていて飛び降りの名所でもあるが、カーブが曲がり切れずに振り落とされて落ちる、なんて事故もある。そんな、曰く付きのカーブ。散らばる破片の具合から見るに、かなりの大きさと見て取れた。
俺は可哀想にと思いながらも、対岸の火事宜しく無感動に横を通り過ぎる。警察が来てるのだ。遅かれ早かれ無事に処理されるだろう。まぁ、少し靄が残るが、ドライブをしていれば忘れれる瑣末な事として、俺はアクセルを吹かした。
次の日。休日出勤になりイライラしながら遅くなった昼食を食い終わってゆっくりしていると、食堂に備え付けてあったテレビにニュースが映る。
『昨夜未明、○○道で事故がありました』
映る場所が昨日見た事故現場で。あぁ、早速ニュースに取り上げられたのか、と注視する。結構な事故だったから昼のニュースに上がってもおかしくないか。なんて思いながら。
『道路には一台分のタイヤ痕しか無く、飛び出した動物等を避けようとして起こった模様です』
「あ、こんな所に居たんですね」
部下がひょこりと食堂に顔を出し、テレビに向けていた目をそちらに向けた。彼女はテレビを見ながら俺の居るテーブルに近付く。
「おう。何か用か」
「もうすぐミーティング始まりますよ。…デカい事故ですね」
「ああ、昨日横通った」
「えぇ?!どんなでした?」
「報道されてる以上の事は知らん」
「相変わらずですねぇ」
『被害者はフェンスから落ちたと見られ、依然捜索が続けられています。被害者は現役自衛隊員の佐竹隆二さんであると…』
ブツン。俺は興味の無くなったテレビを消して食堂を後にした。
end