懺悔せよ(仮)「‥‥‥」
中也のセーフハウス迄全力で走ってきた太宰の額からは大粒の汗が流れていた。
部屋の中から中也の気配がしない。
中也、まだ帰ってきてないのかな?
太宰はゆっくり深呼吸をすると、鍵を鍵穴に差した──だが、
「‥‥‥は?」
鍵穴が何かで塞がれていて鍵を差せなくなっている。何か?否、此れは。
扉の隙間を見つけると太宰は静かに目を閉じた。何かで塞いでるのではない。重力操作で鍵穴を捻曲げているのだ。
露骨に入るなと云っている。
この部屋を解約すると云っていた。恐らくもう戻ってくるつもりはないから扉を壊したのだろう。
何とかなる。
中也なら赦してくれる。
そんな甘えの様な考えをした自分を殴ってやりたい。私はどうしようもない莫迦野郎だ、中也の本気を感じて初めて事の重大さに気付くなんて。
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