Bye Bye, My Dearest.1 遺されたもの
かしゃん。
三闘神の調査のため再び訪れた、遥か天上に座す古代の地。何か硬いものの滑る音が響く。
音の鳴った方、つま先が弾いたものへと視線を向けると、そこにはきらりと光る白銀の指輪が寂しげに転がっていた。
ただ一つだけここに残された、主を亡くした小さな小さな遺品を拾う。
ぐるりと一周するように彫られた白百合と塔がひと際目を惹いた。
「……誰のだろう、これ」
そっと手袋越しに触れ、名前でも刻まれていないかと、輪の中を覗き込んだが錆一つない白銀がそこにあるのみ。汚れひとつも無いというのに、しかし微かに血の匂いがした。
不意に脳裏を過ぎるのはあの日刃を交えそして手にかけた、蛮神と化した教皇を守る十二人の騎士の一人。
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