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    a3m_ryu8

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    a3m_ryu8

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    コノノイ♀のアイスと言い張る
    ムウマリュもいっぱいいる。

    コノノイ♀のアイスオーブは暑い。とは言え、涼しい格好を選択できない時もある。
    時期が悪かった。未だ夏服への変更を許されない、これからさらに暑くなる頃合いだった。しかし、気温は既に衣替え後のような高さで、こんな中では長袖など着れたものではない。だが、事前に決められた日取りは変えられない。
    世界平和機構コンパスへのオーブ側からの出向の任を預かるアークエンジェルの艦長と副官は、その撃沈に対する責について報告を上げる必要があった。あくまで報告でしかないのは全員が把握している事だ。だが、体裁は守る必要があると、厚く硬い生地の長袖ロングの軍服を着用せざるを得なかった。しかし、室内はいっそ寒いもので、冬服であることに二人とも感謝したものだ。
    そして、すべてが終わりドッグへと戻るために外を歩く。すると、様子は一変する。
    「もうね、脱ぎたいわ……」
    「心中お察しします……」
    暑すぎると、額や首から流れる汗をハンカチで抑え、マリュー・ラミアスとアーノルド・ノイマンは不機嫌を隠さず会話する。
    「貴女の方こそ大丈夫なの?黒なんて熱を吸収するわよ……」
    「許されるならば今すぐにでもインナーになりたいですね。下も含めて」
    「わかるわ……でもやめてね」
    「やりませんよ……」
    どちらからともなくため息が漏れる。肌が透けない黒タイツは普段ならばありがたい。だが、夏の日射しの中ではそうはいかない。熱は籠もるし汗で貼り付く不快さも加味される。男性用のスラックスだけの方が幾分かマシではないかとも思うが、全身黒のノイマンにはあまり関係のない話だった。
    「この格好の時だけは制帽なので、それだけは救いですかね……」
    尉官のベレー帽では顔に当たる日射しを避けることも出来やしないとノイマンはボヤく。
    「戻ったらアイス食べましょう」
    「いいですね、ご相伴にあずかります」
    「どうせ誰かさんがストックしてるわ」
    この状態でお願いしたらわけてもらえるはずだと笑い合い、二人の足取りも少し軽くなる。
    「アイス、こんなんでいい?」
    「きゃっ!」
    突然掛けられた言葉とラミアスの小さな悲鳴に思わずノイマンはそちらを向く。
    「フラガ大佐……」
    そこにはラミアスの耳にチューペットを当てたフラガがいた。いたずらが成功した子供のように笑うフラガにノイマンは呆れた顔を向ける。
    「お疲れさん」
    「もう、突然は驚くからやめてよね……」
    暑いのに、目の前でイチャつかれてはさらに暑くなる。
    「はいこれ」
    「ありがとう」
    バキッ、と割れたチューペットは既に少し溶けシロップが垂れる。先の付いた方をラミアスに渡す。受け取ったラミアスが素直にチューペットを口に運べば満足げに目を細める。
    二人だけでやってくれ、という言葉を飲み込んだ。
    「大佐、俺の分はないんですか?」
    ジト、と睨めばフラガはバツが悪そうに笑う。
    「お前の分はあっちの大佐からな」
    「はあ?ひゃっ!!」
    突然、ノイマンは耳に冷たいものが当てられたことに思わず小さな悲鳴を上げる。
    「こっちの大佐からじゃ不服かな?」
    振り向けば、フラガが持ってきたのと同じアイスを持ったコノエがにやりと笑いながら立っていた。
    「ビックリしました!!コノエ大佐もフラガ大佐みたいなことするんですね」
    「おいノイマン、そりゃあないだろ」
    「お気に召さなかったかな?」
    聞きながらも答えを聞く気のないコノエによってパキッ、と二つに割られたアイスの片方がノイマンに差し出される。
    「頂きます」
    素直に受け取ればその冷たさが心地よかった。
    (あ、いっぱいある方だ)
    受け取ったアイスの先に付いた部分に軽く触れ、指先で弄ぶ。日射しですぐに溶けシロップに戻っているのを慌てて啜ると一口分を噛み砕いた。
    黒服で暑くなった全身に冷たさが染み渡る。
    「ありがとうございます。生き返ります」
    暑さで上気した頬で屈託なく笑う姿にコノエは微笑ましさと、少しの劣情を抱いた。しかし、それを悟られるわけにはいかない。コノエは手に持ったアイスの三分の一ほどを一気に齧りとると、思い出した、と話しかける。
    「そうだラミアス大佐。これを」
    涼しい顔をしてラミアスに手渡したのは可愛い日傘だった。
    「なんでおたくがこんなの持ってるわけ?」
    突然の行動に恋人であるフラガは面白くない。つい口調が荒くなったのをラミアスに腹を小突かれ咎められる。
    「うちのアグネス――、ギーベンラート中尉が、この日差しならあった方がいいだろうと貸してくれたんですよ」
    「お心遣い感謝いたします。それではありがたく」
    自分たちよりも地球に慣れているのでは無いだろうかと内心微笑ましく思いながら借りた日傘をさせば、そこだけ日陰が広がります体感涼しく感じる。
    「似合うな……」
    「ムゥ?」
    思わず呟いたフラガを一睨みすれば軽薄な拝み手で謝る。これももういつものことだと、貰ったアイスを噛み砕いて啜りながらノイマンは笑う。そんな彼女の上にも突然日陰が出来た。
    「え?」
    「こっちはルナマリアがね、黒服の君にって貸してくれたんだよ」
    上を見ればラミアスに渡された装飾の多いものよりも大分実用に寄った日傘がさされていた。
    「二人とも気が利きますね」
    「あとでお礼に参りますわ」
    多少なりとも暑さから逃れた二人は穏やかに笑う。
    既に日陰のない男は一瞬恋人の方を窺うが、これは彼女のために部下が貸したものだと気持ちよく諦める。しかし、まだコノエはノイマンと同じ傘の中だ。それはおかしいだろう、とフラガは文句を言いたい気持ちになるが、気遣いを受けた側であるため何も言えずアイスを噛んだ。

    「私相合傘しろって意味で日傘貸してないんだけど!」
    「アンタのはラミアス大佐が一人で使ってるじゃない」
    「アンタの日傘で相合傘されてんのによく黙ってられわね?!」
    「もう今更じゃない?」
    「だからエロオヤジに日傘預けたくなんかなかったのよ!!もう!!自分がイチャつく口実に使うなんて信じられない!!」
    「アンタが自分から言いだしたんでしょ?この日差しで迎えどころか日傘もないなんてありえない、せめて私の使ってもらわなきゃって」
    「私が自分で渡すつもりだったのよ!」
    「外出ずに済んでよかったって思いなさいよ……」
    「そこは感謝してるわよ……でも、二人とも日傘くらい買いなさいよね……」
    「単に今回持っていけなかっただけでしょ……」
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