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    はしっこ

    絵をかくのが好き

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    はしっこ

    MOURNING想い人のために男が死ぬ話/
    帷…死のうとする男
    玄…帷の友人、葬儀民学者の男
    宵…玄に懐く幽霊の少女
    海に沈めてほしいと、彼は笑ったのだ。

    「彼女が俺を二度と思い出すことのないように、幸せだけを抱いて生きていけるように」

    隣に座る宵は、じっとおれの顔を見つめていたように思う。おれはといえば、乾いてもいない喉に紅茶を流し込むことで精一杯だった。

    「俺が自殺したあと、切り刻んでまとめて捨ててもらうようなことも考えたんですけど…それだと手間がかかるでしょう、友人に頼むことではありませんから」

    真っ白い顔だ。もうすでに、生きていることをやめたような顔。すべての生を拒絶しているような顔。そもそもね帷くん、普通の友人なら海に沈めてくれなんて頼みはしないんだよ。おれが人間の〈葬〉について研究している身であるから、そう頼むのはおかしくないのかもしれないけど。
    心躍るシチュエーションには違いない。ほかの誰かと結ばれた想い人から身を引き、自ら命を絶つ男の物語。危うい少女らが飛びつきそうな物語だ。どんな言葉で送ろうか、どんな花を添えようか。海ならどこまでも音が渡るから、なにか演奏するのもいいかもしれない。趣味を兼ねた仕事であるから、あれこれ考えるのは楽しいのだ。
    「自分が死んだらこうしてほしい」「遺 1949