兵営にて兵営にて
同期に少々難のある男がいた。
軍人の家系に生まれ、幼い頃から軍人になることが決められていた男だ。傲慢な男で、同期や部下からは距離を置かれている。軍人としても人としても、人の上に立つのは向いていない男だった。
私も距離を置きたかったのだが、同じ聯隊の新任同士ということで、彼の世話を任せられてしまった。
本来ならば、新任の世話は補佐の軍曹の仕事なのだが、彼は補佐役と折り合いが悪く、二人だけにするなと中隊長殿から指示がくだっていた。ならば、他の者を補佐にとも思うのだが、誰が補佐役になっても上手くいかないことはわかっていた。
上官に対して横柄な態度を取ることはないので、私たち同輩と部下達ほど評判は悪くなかった。しかし、そんな彼が、公然と批判する上官が一人だけいた。
1878