召喚した悪魔が推しに似ているもう最悪。全部どうにでもなってしまえ!!
交際3ヶ月目にして彼氏がとんでもクズ男であった事が発覚した。
しかも私は浮気相手で、別に2年付き合っている彼女がいたみたい。
おかげさまでその彼女は大激怒。罵詈雑言を浴びせられた私。
何??何で??私は遊ばれた側なのに何で私がそんなアバズレなんて言われなきゃならないの!?泣きたいのも怒りたいのも私の方なのに!!
そいつは失恋して早々に出会った男で、傷心だった私には天使に見えたのに。とんだ悪魔だった。元彼にもそいつにも遊ばれて、まるでピエロだ。
あぁ、もうどうにでもなってしまえばいい。全部最悪で最低だ。
あの漫画みたいに、悪魔を呼んでめちゃくちゃに出来たら良いのにな。
そうだ、悪魔を呼ぼう。
それであの漫画みたいに嫌な事全部めちゃくちゃにしてもらって、最後は恋人に…。
私は「悪魔な恋人」という漫画を読んでいる。
主人公のヒナミという女の子は、黒魔術でカインという悪魔を召喚する。そしてその悪魔と契約して、嫌な奴を成敗する。そして次第に2人は惹かれ合い、人間と悪魔の禁断の恋に落ちて…魔界からも人間界からも追われる身となり逃避行に発展していく。
そしてここでカインのセリフ「お前となら、どんな地獄だろうと堕ちてやる」
もうここのセリフがたまらない。
カインもとんでもない男だ。サディストでとんでもなく横暴だけど愛しているヒナミには優しくて…
私もクズでいいからこんな男に出会いたい。そんな一縷の望みをかけて挑んだ結果が毎回これである。
毎回のことだけど、今回ばかりはメンタルに来た。もう悪魔召喚だって何だってやってやる!!召喚した悪魔がイケメンだったら付き合ってやる!!
悪魔召喚の方法は有象無象のオカルトマニア達が色んな方法を書いていた。
必要なものは魔力が込められた石、悪魔、ケーキと召喚者の血液。
この方法は上位の悪魔を呼び出すものらしい。カインも上級悪魔なので、せっかくなら上級を呼んでやろう。
まず魔力石とケーキで普通の悪魔を呼び出す事に成功した。こいつがブサイクで良かった。罪悪感がまっったくない。
そして魔法陣を書いて鏡を部屋の四隅に置く。甘いお香を焚いて、魔法陣の中に対角に魔力石、悪魔、ケーキを置いていく。魔法陣の外側には十字になるように蝋燭を置く。そして魔法陣の真ん中にボウルを置いて、その中に灰を入れる。その灰の上で羊皮紙を燃やしながら腕を切って灰に血を落としていく。
……
……
何も起こらない。
失敗か?そんなはずはない。普通の悪魔は召喚できたのに!!
と思った直後、蝋燭が消えて魔法陣が緑に光り始めた。
そしてボウルに置いた灰が動き出し、それらは徐々に人の姿になる。
それと同時に置いていた悪魔が悲鳴を上げ始めた。
呼んでいた悪魔が事切れたのか、煙のように消えてしまうと灰から生まれた悪魔はその姿を現した。
私は思わず
黄色い歓声を上げた。
「きゃあぁあぁっ!!!」
姿を現した悪魔は、漫画で見たカインにそっくりだった。
跳ね上げた短い白髪に吊り上げた緑の目。口元の傷とかたくさんのピアスはちょっと違うけど、まさにカインそのものだった。
「早々に悲鳴を上げられるとは、悪魔冥利に尽きるな。」
尻餅を付いたままの私に悪魔は手を差し伸べてくる。
「俺を呼んだのはお前か?」
あ、これ、漫画で見たセリフだ。
次の瞬間、私は叫んでいた
「付き合ってくださいっ!!」
あのカインが、私の推しのカインが、今目の前にいる。
漫画のキャラだからいるわけないと思っていた男が今、ここにいる。
絶対に逃したくない。
「……ははっ」
悪魔は笑った
「いいだろう。それがお前の願いなら、叶えてやる。」
そして跪いて私の手を取った。
これも漫画で見たセリフだ。仕草まで完璧にカインだ。
「だが…」
と悪魔は続ける
「俺はあまり良い男ではないぞ?」
悪魔は微笑んで、私の手にキスをした。
キュン。
もう落ちてしまった。
こんなだからクズにばかり引っかかるんだと思いつつ、カインならもうクズでもいい。
「お願いします!!」
私は即答した。
最悪な失恋をして早々カインに出会えたなんて、振られて良かった。
「ん…お前、」
「は、はい!」
「その腕の傷は何だ」
「あっこれは召喚の時に…」
「…俺を召喚する為に傷付けたのか。悪いな」
悪魔は私の腕の傷を指で撫でる。
すると傷が一瞬にして無くなった。
驚いていると、
「俺の彼女になるんだ。傷一つ無いように、大切にしてやらないとだろう?」
そう言ってまた微笑む。
キュン
もう落ちてしまった。悪魔とはいえ、こんなイケメンにそんな風に言われて落ちない訳がない。
いや待って。これ何度かやったパターンだ。同じ感じで恋に落ちて、結局そいつは全員クズだった。今回も同じパターンかもしれない。
カインならクズでもいいと思いはしたが、一瞬踏みとどまって聞いてみた。
「あの、貴方はクズ男ですか!?」
目の前にカインが現れて昂っているとはいえ、この聞き方は良くないと思う。
「クズ…まぁ、友人にはよく悪い男とは言われるな。だが他の男よりは良い男だと自負してしておこう。」
クズだった。しかも自信満々なタイプのクズだった。
一番重要な部分も聞いておこう
「すぐに浮気したり私の事不倫相手にしたりしてますか?」
それでも初対面の人に聞く事ではないと思う。もう私は限界だ。
「…随分酷い目に遭っているな。そんな事ばかり起こるのか?」
「はい」
「そうか。辛いな」
慰められた。初対面の、しかも悪魔に慰められた。悪魔にすら慰められるほど惨めなのか私は。
いや惨めだ。現実の恋に敗れまくったからって悪魔と恋人ごっこしようとしているのだから充分惨めだ。
「安心しろ。俺は恋人は大事にするタイプでな。そんな事は無いと約束しよう。」
カインだ。バリバリにカインだ。恋人を大事にするタイプなんてもう本物のカインだ。
でも前もこの手の男に引っかかって挙句捨てられた。もうほぼ折れてるけど慎重に行きたい。
勘繰る私を悪魔は急に抱き寄せて、
「信じれないのなら、このままキスしても構わないが。」
と顔を寄せてくる
「信じます!信じますっ!」
「ならいい。お前、名前は?」
「ゆ、ユリです…」
「そうか。今日からよろしくな、ユリ」
声にならない歓声を上げそうになりつつ、私はこくこくと頷いた。
あとがき
飽きちゃったのでここまで