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    桜庭🌸

    @skrbkq

    成人済(20↑) / カプなし / シくんとネ氏

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    桜庭🌸

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    「シドって、ジェットコースター乗ったことある?」
    「んあ?」
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    ジョーカーくんとシドくんがおしゃべりしているだけの小話

    ○○へのお誘い「シドって、ジェットコースター乗ったことある?」
    「んあ?」
     唐突な質問に、シドはハンバーガーにかぶりつこうとした大口をそのままに素っ頓狂な声を上げた。そんな話してただろうかと、咀嚼しながら思い返すが、すぐに否定する。いや、お互いの仕事上のパートナーの愚痴を言っていたはずだ。
    その困惑を知る由もないジョーカーは、もぐもぐ口を動かしているせいでシドはしゃべれないんだなと決めつけて、淡々と話を続ける。
    「クイーンがね、」
     ──そうそう、その話。
     話が見えたと安心したのもつかの間、ジョーカーはまた突拍子もないことを言い始めた。
    「シドにトルバドゥールに遊びに来てもらったらどうかって」
    「は?」
    「来てもらうのは悪いけど、さすがに探偵卿のいる屋敷に遊びに行くわけにはいかないだろ?」
     ──いや、そうじゃなくて。
     むず痒い胸にそっと手を当て、シドはひとつ深い呼吸をした。運ばれてきたカフェラテをジョーカーが受け取るすきに、できるだけ簡素な質問をいくつかピックアップする。彼がカップに口をつけたタイミングで、そのうちの一つを投げかけた。
    「確認だけど、クイーンはおれが探偵卿の執事だって知ってるんだよな?」
    「そうだね」
    「おれとお前が昔からの知り合いだってことを知ってるのか?」
    「そうみたいだね」
    「……なんで?」
    「さぁ」
     ジョーカーが積極的に過去──特に収容所の話をするはずがないところまでは予想していたが、ここまでクイーンに疑問を抱かないのは不思議だった。今更驚きもしないのだろう。執事になって何回目かもわからないネアの突拍子もない出資話を軽く受け流した今朝の自分を思い出し、シドは一人納得した。
     ただ、疑問が晴れたわけでも、先の質問の意味も見えない。シドは真意を探るため、別のアプローチをかけることにする。
    「まさかトルバドゥールへのお誘いだとはな。お前がジェットコースターなんて言うもんだからさ、てっきり遊園地へのお誘いかと思ったぜ。ちなみに、乗ったことはあるよ」
     ジョーカーが伏せていた瞳を丸くする。
    「女の人と?」
    「八歳のな。……ネアの姪っ子だよ。んな顔すんな」
    「安心したよ」
     誤解が解けてほっとする。直後にシドは、安心できることなど何一つなかったことを知る。
    「じゃあ、トルバドゥールに来られるね」
    「……はい?」
    「シドも知ってると思うけど、トルバドゥールではワイヤーで直線移動するんだ。ジェットコースターが大丈夫なら、大丈夫」
    「じゃあ、八歳の女の子でも大丈夫だな」
    「何言ってるんだ。シドだから大丈夫なんだよ」
    「それ、こっちのせりふな? 謎理論すぎ」
     ──ジェットコースターのくだりはなんだったんだ。
     そう言いかけて、やめた。もう問答はあきらめた。「シド、何か飲むか?」と悪気など一切なく気遣う友人に、すっかり毒気を抜かれてしまったのだ。ウェイターに紅茶を注文した横顔を、そのまま目の前の友人に向ける。ブルーサファイヤの輪郭がきゅっと丸くなったのにつられ、シドもふっと微笑んだ。
    「クイーンに、ぼくの友人はシドだけだってはっきり言ってやるんだ。あなたは仕事上のパートナーですってね」
    「なんだよ、それ」
     シドはそっぽを向いた。そして、もっと早くにドリンクを注文しなかったことを惜しく思った。照れ隠しをするにはあまりにも手持無沙汰なのだ。
    一方、恥ずかしげもなくジョーカーは続ける。
    「いつかネアの屋敷に行って、ネアにも同じことを言ってあげようか。彼もおまえのことを友人呼ばわりするみたいだからさ」
    「ばぁか。もっと面倒なことになるっての」
     運ばれてきた紅茶を傾けて、シドは軽口を叩いた。そこでぴたりと動きが止まる。
     ──クイーンに「友人です」なんて紹介されたら、だいぶかなりおそろしく面倒なことになるんじゃ……。
    「それで、シド。トルバドゥール来てくれるんだよね? いつにする?」
     青い瞳からまっすぐのびる瞬きを遮るように、シドは深くカップを傾けたのだった。
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    桜庭🌸

    DOODLEモナコの人たちのバニーネタ🐰
    カプなし / とっても健全
    様子がおかしいシくんと通常運転のネ氏
    カジノにバニーガールいなくなりつつあるそうですね
    モナコのカジノは実在してるけど、拙作のVIPルームはお金持ちが散在するにふさわしい想像上のお部屋ということで。
    抗え、服従バニー 午後十時半。多忙な一日を終えたシドは、自室に向かっていた。わがままな主人から解放されたあとも、すれ違う使用人ににこやかに挨拶する。そんなことは、彼にとって造作もないことだ。──たとえ困惑で頭がいっぱいだとしても、だ。笑顔を作るよりも、右腕に提げられた、明朝には爆発する時限爆弾を暴いてやりたくて、逸る心と足をおさえるのに神経を使っている。
     右手に下がる紙袋の中身を確認したくて仕方ないのは、「やっぱり爆弾だったか」と証拠をおさえた警察のような勝利宣言をするためではない。爆弾がただのおもちゃであると一秒でも早く確信して、「なぁんだ」と言うために、隅から隅まで確認したいのだ。爆弾が爆発する前に。
     すべりこむように自室に入るシド。あられもないビジョンを浮かべて、怒りと困惑と、猶予は九時間しかないことへの焦燥で、その場でへたりこみ、盛大な溜息とともに膝を抱える。
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    桜庭🌸

    DONEそう長くない人生で、いちばんそばにいたいと思う相手とはいつも離別していたことばかり思い浮かぶ。両親然り、友人然り。
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    ネ氏とシくん
    「明日世界が滅ぶ」なんて噂めいたものを耳にした二人のお話
    死ぬにはもってこいの日 十数度目のコール音を聞いたところで、シドは通話終了のボタンをタップした。だらりと下げた腕の先、スマホのロック画面には、今日のTO DOリストとリマインダー通知、ニュースアプリの最新情報の通知がずらりと並ぶ。
     そこに、新たな通知とアラーム。出勤のため、部屋を出る時間だ。ベッドサイドの姿見に映った完璧執事の笑顔を確認して、シドは自室を出た。

    ***

     時計を確認し、シドは使用人用のダイニングルームへ向かう。主人が昼食をとる一時間が、シドの昼休みだ。メイドに給仕の仕事をしてもらっているその時間で、昼食をとり、午後の予定とタスクの確認をして、可能であれば仮眠をとる。これがシドのルーティン。
     少しゆっくり昼食をとれるな、とシドは考える。明日のパーティーが中止になったため、主人の召し物を選び、主催や招待客のデータを記憶するといったタスクがなくなった。シドは丁寧に椅子を引き、間続きになっている厨房にいちばん近い席に座った。
    3270

    桜庭🌸

    DOODLEトル学軸です
    ヤウズくん、お誕生日おめでとう!!
    たとえばこんな誕生日【二月十日 午前四時三八分 教室にて】
     緊張したぁ……。きれいな子すぎてびっくりした。そうそう、エレオノーレ。社長令嬢らしいよ。こんなに緊張するならゲルブに聞けばよかった。わかってるって。女子に聞きたくて勇気出したんだもんね。んで、ここからが本題。結論から言うと、ヤウズくんはバレンタインのチョコは受け取らない主義なんだって。去年大変だったし、手作りや差出人のないものは食べられなくて申し訳ないからって。優しいよね、そういうとこ。まぁ、彼の料理の腕前を見たら、手作りを渡す子なんてもう現れないと思うけどね……。わかりやすくがっかりしてるわね。わかる。私もさっきまでそうだった。でも、朗報よ。エレオノーレが言うには、誕生日プレゼントは受け取ってくれるらしいの! 私たちのやるべきこと、わかった? そう。まず、手作りのお菓子は渡さない。チョコに限らず。渡し物には「誕生日おめでとう」のシールをくっつけること。間違ってもハートのシールとかだめよ! 手紙? まぁ、それは……好きにしたら? 違うって、別に入れようと思ってないから! 友チョコすら受け取ってもらえないのがなんとなくさみかったし、本命チョコを渡そうか迷ってるあんたに協力しただけだから。私は本命チョコ、生徒会長に渡そうかなって思ってるんだ。え? 簡単、簡単。毎年生徒会室前に巨大な箱が置かれるから、そこに入れるだけ。毎年数が多くて大変だから、副会長が提案したらしいよ。副会長もかっこいいよね。クールだけど、優しくてさぁ。違うから。ただのファン。あんたはどうなの? 転校してきたシド先輩が気になるって言ってたじゃん。あぁ、わかるわ。うんうん、あの人は「推し」だわ。RD先輩にはマガさんがいるから、触らぬ神に祟りなしよね。RD先輩に好意を見せようものなら、計算されつくしたお仕置きされそう……。優しい人なのは知ってるんだけどね。あれでしょ? 「オタクに優しいギャル」ってやつ。ま、とにかく。誕プレ買いにいこ。チョコ買う前に聞けてよかったよね。
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