オクバデ/焼き付くし灰になるまで焼き付くし灰になるまで
火に炙られた身体はやがて無となる。その先にあるは天登る魂。
「俺達の旅路は終わりを迎えるが、その先には何が待っているのだろう?」
「さぁ。誰かが地動説を説くんじゃないのか?それが私でない事が悔やまれる」
足元の枝に火が付けられ、口に炎が辿り着くまで続けた会話。
「大丈夫ですよ。バデー二さんの説いた地動説はきっと誰かに届きます」
「……そうか」
そこでバデー二さんの言葉が途切れた。続いて俺も喋れる口が業火に包まれる。熱いという感覚はない。きっとその痛覚さえ燃えてしまっているのかもしれない。焼け焦げてしまうのか、この身体は。呆気なく燃える。これまでの人生は楽しかったと言うには至らない。けれどこの数ヶ月間は、なんと言うか喜びに満ちていた。知らなかった世界ばかりで理解もほんの一握りだけれど"知らぬ知"と"知る知"の狭間で俺はこの世に生まれて良かったと思えてしまった。
「私は誰かに引き継いでほしいとは思わないが、この場合は仕方がないか。予防策もしたくはなかったがな」
そう言ったバデー二さんの表情は夜の暗さでよく見えなかった。
いよいよ絞首台へと近付く。
死ぬのか、俺は。
けれど怖いと感じない。
きっとバデー二さんが一緒からだと思う事は勘違いにしておこう。
綺麗な星空ではそんな無粋な言葉はいらない。
グラスさん、バデー二さん、ヨレンタさん。
どうも有難うございます。
俺も満足な表情で死ぬ覚悟が出来ました。
2024/12/26