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    棺(ひつぎ)

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    棺(ひつぎ)

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    6月なのでジューンブライドに併せてみました。
    ―秘めたるは―

    コルベさんが成人したヨレンタさんへの想いを告げるお話。
    彼女が未成年の頃から優秀な助手として称されていましたね。
    その感情が「愛」や「恋」だと自覚した彼に対して『未成年に対して不純だ』などのお言葉はお控え下さい。本人が自覚していない内から発生している感情です。

    #コルヨレ

    コルヨレ/秘めたるは長年、同じ職場で働いていると改めて感じる事がある。優秀だと言う事だ。私は素晴らしい人材を助手に出来た喜びと、これからも発表されるだろう論文をいち早く読める立場として周囲から彼女を守れる側にいる事への自負を持っている。この世界はまだ女性が男性と並んで何かを成し遂げるには早いのかもしれない。けれど私なら、私なりに上司として守れるのだと言う感情をピャスト伯が天に還られてから約八年後に自覚した。
    今ではすっかり大人の女性となり、職場環境も以前よりかはほんの少しだけ変化しただろうか?私と共にいる時の彼らは彼女に対して発言を選んでいる様に思えるから、ほんの少しは違っているのかもしれない。きっと私が彼らに小言を告げられるのではないかとビクついているだけなんだけど。私の一言でこの屋敷から飛ばされる事になるのだから神経を尖らせるのも分かる。いい気味だと思う。性別を理由に優秀な人材の目を潰してしまう思惑を抱いている者達への見せしめとしての牽制にも繋がる。
    「私は皆に対して嫌な上司なんだろうな」
    「どうしたんですか?」
    コルベの仕事部屋で本の整理をしている最中に呟いた言葉にヨレンタは驚いた。
    「いや、何でもない」
    「…はぁ」
    言葉を続けようとしないコルベにヨレンタも聞き出そうとはしなかった。心の内に秘めた感情をいつか伝えないとと思いながらも、断られるのを恐れて言い出せない。意を決した言葉が先程のものだった。彼女が成人になったのを機に恋心を抱いていると自覚してしまったら抑えきれないでいる。上司として守る立場であり、一人の男性として意中の人に想いを伝たいという板挟み。公私混同はしないと決めていた彼にとって難しい選択に迫られている。早くしないと第三者に奪われてしまう可能性がある。いつ父親の勧めで結婚してしまうか分からない現状と、結ばれてしまったら家事に専念しなければならないという環境下では告白しようにも足踏み状態。コルベが身請けしてしまえば家庭に属しながら仕事を担う事は容易だろう。
    自宅でも天文における仕事は豊富にあるのだからこの屋敷に出向かなくても済むし、何しろ誰にも文句を言わさずに仕事が出来る環境を揃える事が出来るのは私しかいないと断言出来た。残るは伝えるだけ。それが出来ていれば。
    「やはり言うべきか」
    言える時に言わないと仕事を理由に遠回しにする悪い癖が出るだろう。いつもそうだ。今日こそ伝えるぞ!と意気込んでも仕事を理由にしたり、断られるのを恐れたりして前に進んでいない。繰り返される日常は変わらずに二人の関係もそのまま。彼女は彼の心の内を知らないでいる。
    「ヨレンタさん」
    手にしていた本を床に置いて彼女へ近付くとその様子を察して同じく本を床に置き、彼と対面した。
    「何ですか?」
    「その」
    「?」
    「え…と」
    「コルベさん?」
    頭を掻きながら唸り言葉を選んでいる姿は初めて見た気がした。普段なら飄々としているのに何やら思い詰めた表情で。
    「君は好きな人はいるのかい?」
    彼の焦りが見てとれた。
    「え?ええ?」
    「すまないっ突然そんな事を聞かれても困るよね?」
    「……」
    やはり困らせてしまった。なんの脈略も無しに本題を出すなど配慮に欠けている。けれど答えを聞くまでは引けない。
    「そ、そうですね…。父親という答えは無しですか?」
    こんな優しい娘に言われたらその父親はさぞ幸福者だろう。この質問は家族だと答える者は少ない。年頃の女性なら家族以外の誰かだと理解するが恋愛面で疎い彼女は彼の予想を良い意味で裏切る。
    「う~ん、そうだね。家族以外に」
    「…家族…以外…」
    熟考しだした彼女を見て本当に誰も居ないかもしれない確証を得ても良いのだろうか?
    「わ、私は?」
    「コルベさん?」
    点と点が合っていなくて「何故、コルベさんの名前が?」と言葉が続いた。このままの関係性でいたい気持ちと早く手に入れてしまいたい感情が揺れ動く。
    「そう。私がヨレンタ君を好きだと言ったら?」
    「好き?」
    「直球で言ってしまえば、伴侶になってくれないか?という意味を込めているんだ」
    「はんりょ、え!は、伴侶?」
    言葉の意味を理解したのか慌てた彼女は足元の本に躓いて倒れそうになったが彼が身体を抱き締めて防いだ。
    「大丈夫?そんなに慌てられてしまうとは思わなかった」
    「あ、有難うございます。冗談にも程が過ぎます…」
    「冗談に聞こえる?」
    耳元で聞こえる彼の心臓の鼓動の速さがそれを物語っている。もしかしたら本心なのかもしれないと。
    「嘘ならこんなに緊張していないよ」
    「えっと、その、突然の事なので良く分かりません」
    「答えてもらえるまで離せない。勿論、仕事への影響は考えないで断って構わない。移動させたりはしないから。仕事とプライベートは別物として考えている」
    よく見るとコルベの頬は赤く染まっている。幼い頃、父と亡き母に抱っこやおんぶといった以外の身体を密着させた事がないヨレンタも緊張してしまう。
    「わ、私は…、その、コ、コルベさんが言って下さるのなら喜んでお受け致します」
    配慮なのか本当に受け入れてくれたのか曖昧さ漂う返答だったが、彼は喜びを隠せなかったに違いない。
    「本当に?」
    「はい」
    「私に遠慮して無理矢理言ってはいないかい?」
    更にギュッと両腕に力が込められる。
    「無理はしていません。私なんかがコルベさんの伴侶になれると思うと…」
    実は彼女も密かに彼の事を慕っていたと伝えられると涙が溢れそうになってしまう。
    「これは両思いだと理解して良いの?」
    「まさか私を好きになってくれているとは思わなくて、最初は驚いてしまいましたが正直嬉しいです」
    秘めた感情は二人を結び永遠の愛を誓う。
    「愛してる」
    「…私も…あ、愛して…います」
    想いを口にしないと分からない世界の中で結ばれた二人に祝福を。


    2025/06/21
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    その感情が「愛」や「恋」だと自覚した彼に対して『未成年に対して不純だ』などのお言葉はお控え下さい。本人が自覚していない内から発生している感情です。
    コルヨレ/秘めたるは長年、同じ職場で働いていると改めて感じる事がある。優秀だと言う事だ。私は素晴らしい人材を助手に出来た喜びと、これからも発表されるだろう論文をいち早く読める立場として周囲から彼女を守れる側にいる事への自負を持っている。この世界はまだ女性が男性と並んで何かを成し遂げるには早いのかもしれない。けれど私なら、私なりに上司として守れるのだと言う感情をピャスト伯が天に還られてから約八年後に自覚した。
    今ではすっかり大人の女性となり、職場環境も以前よりかはほんの少しだけ変化しただろうか?私と共にいる時の彼らは彼女に対して発言を選んでいる様に思えるから、ほんの少しは違っているのかもしれない。きっと私が彼らに小言を告げられるのではないかとビクついているだけなんだけど。私の一言でこの屋敷から飛ばされる事になるのだから神経を尖らせるのも分かる。いい気味だと思う。性別を理由に優秀な人材の目を潰してしまう思惑を抱いている者達への見せしめとしての牽制にも繋がる。
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