心にあんたが住み着いた「高峯! これを見てくれ!」
部活終了後、着替え終わってロッカーを閉めてさぁ帰ろうといった時だった。一人の夜道は怖いだろうと俺を待っていた守沢先輩がベンチから立ち上がりニコニコと俺の眼前にぶら下げて見せたのは俺が今集めいているゆるキャラのキーホルダーだった。新発売の対象ドリンクに期間限定のおまけでついてくるやつ。前に一緒にいる時に見つけて、何本買おうかお小遣いと相談しながらカゴに入れていたら、守沢先輩は俺も買っておまけを高峯にやろうと言ってそのうちの一本をすっと持ち上げてレジへを向っていった。その後ろ姿がやけにかっこよく見えて、なんだか無性に胸が締め付けられたのを思い出す。あの時の、覚えてたんだ。
「コンビニで飲み物を買おうと思った時、高峯が欲しいと言っていたのを思い出してな! 運良く一個だけ残っていたから、ほら、持ってないやつか確認してくれ。もしそうなら受け取ってくれると嬉しい!」
「あっ……ありがとう……ございます」
実はもう既にもっているやつだった。だけど、別に二個あっても困らないし。嬉しいし。
「持ってないやつです……」
口からするりとこぼれ落ちた。あれ? なんで俺嘘ついたんだろう。別にもう持ってますけど一応貰っておきますって正直に言ったっていいのに。
「そうか! それは何よりだ」
嬉しそうに破顔する先輩を見て、まぁ嘘も方便? っていうしいいよねと思うことにした。
「ふふ、あのな、最近は高峯がいなくても高峯のことをふと考えてしまうんだ」
「なんスか急に……」
「はっはっはっ、まるで高峯が俺の心の中に住み着いたみたいでな! 楽しいぞ!」
「……きっ、気持ち悪いこと言わないでくださいっ……あんまりひどいと訴えますからね!」
ざわざわした。胸の奥が疼いたみたいに。誰があんたみたいな暑苦しいひとの心になんか住むかよ。