testudosum☆quiet followMAIKINGジャミカリ。だいぶ前にツイートしたカリム褒め褒めジャミルの話です。例によって書きかけなのでこちらに。気が向いたら完成させます。 「おはようカリム。起きてるか?」「ん、ん~……おはよ、ジャミル」「ああ、涎が垂れている。幼い子どもみたいでかわいいが、早く顔を洗った方がいい」「わかった……ん?」「カリム、聞いたぞ。魔法史の小テスト、満点だったらしいじゃないか。よく頑張ったな、流石カリムだ」「ありがとう! ジャミルがヤマを教えてくれたおかげだな! ……あれ?」「ほら、今日の弁当だ」「やったー! ありがとうジャミル! 今日も美味そうだな!」「……ふふ」「ん? 何笑ってんだ?」「いや、食べ方というか、所作が綺麗だと思ってな。ずっと見ていられる」「そうか? こればっかりは実家の教育に感謝だな」「いや、それもあるだろうが、俺はカリムの努力だと思うぞ。教育の結果だろうが、身に付いたのはカリムが頑張ったからだろう」「お、おう……」「ジャミルがおかしい」「え今更?」 体力育成の授業中、短距離走のタイムの測定が終わって、残りの生徒を待っている時間に、カリムは最近の悩み事を打ち明けた。相手は、合同授業で同時にタイムを測ったフロイドである。芝生の上に二人で座り込んで、周りに聞こえないようにこっそり話しかけたカリムの配慮は、普通にいつも通りの声量で返事をしたフロイドによって無に帰した。「今更って、フロイドは知ってたのか?」「知ってたも何も、もう二週間前くらいから変だったじゃん。あのウミヘビくんが繁殖期のイルカみたいに口説いてんのに、ラッコちゃん気付いてなかったの?」「え、二週間……? そんなに……?」「うわマジで気付いてなかったんだ、ウミヘビくんかわいそー」 カリムの言うジャミルの異変は、フロイドも知る所である。ジャミルとアズールが同じクラスであるため、アズールに会いに行ったらジャミルと顔を合わせることも多いというのもあるが、実は学年全体でそのことが密かに噂になっているのである。ジャミル・バイパーがめちゃくちゃ主人を口説いている。乱心か、玉の輿狙いか。ホリデー中に起きたあの事件の時、アズールが配信した映像はSNSを通じてナイトレイブンカレッジ生にも広く知れ渡っていたし、実際ホリデー明けからジャミルが隠していた実力を発揮し、カリムをコテンパンにする姿が目撃されていたため、現在のこの変化は噂好きの生徒の間では今最も熱い話題の一つだ。鈍感が服を着て歩いているようなカリムは今になってやっと気付いたようだが、既に周囲には大分広まっていた。「そうだったのか……でも、なんで? ジャミルが俺を褒めることあるか? ジャミル、俺のこと嫌いって言ってたのに」「現にあるんじゃん。てか逆に何で今気付いたの?」「いや、最近なんかおかしいなって思ってたんだけど、今日の昼に『食べ方が綺麗』って言われたとき、『実家の教育に感謝だな』って言ったら、『お前の努力の結果だ』って言われたんだ。そのとき、なんかこう突然……」「あっはーラッコちゃんいつも一回躱すもんねえ、追撃があると思ってなかったんだ」「追撃? よくわからないけど、そのとき突然、そういえばジャミルが最近変だったなって思い出したんだ」「それで気付くのも筋金入りっていうか、ウミヘビくん苦労したんだな~ってわかるけど」「?」 小首を傾げるカリムは、誉め言葉に慣れている。それを角が立たないように躱す術も、上流階級の当然の修辞として身に着けている。本人は自覚していないその振る舞いが、ジャミルの異常に気付くのが遅れた一因でもあるだろう。「それで、ラッコちゃんに心当たりはないの? 二週間前」「二週間前、二週間前なあ……あ、なんかジャミルが怒ってた気がする」「それじゃん。何で怒ってたの?」「わからない……俺結構ジャミル怒らせてるし」 カリムは目を瞑ってウンウン唸った。必死で思い出そうとしているが、その顔を見る限り無理だろうなとフロイドは思う。抜き打ちで小テストがあったときと同じ顔をしている。この分だと長くなりそうだと判断して、フロイドは言った。「わかんないならさあ、ウミヘビくんに直接聞けばいいじゃん。俺この後ちょうどアズール迎えにC組行くし、一緒に行ってあげるよ?」「本当か!?」 目を輝かせてジャミルはフロイドに飛びつく。一応闇の鏡に慈悲の精神を見出されたフロイドは、寛大な心でそれを受け止めてやったのだった。あと単純に面白そうな気配がしたのだ。 一方その頃、二年C組では、占星術の授業が行われていた。「それで、進捗はどうです?」「それは課題の話か? それならもうほとんど終わっているからお前の手を煩わせることはないぞ」「嫌ですねえ、最近めきめきと頭角を顕しているスカラビアの副寮長殿に今更課題の心配なんてできませんよ、僕が言っているのはあなたの『計画』の方です」 本日の授業での課題を終え、あとは先生の評価を待つだけだったジャミルの隣に、いつものあの胡散臭い笑みを浮かべたアズールが座る。手際のいいこの男のことだから、既に必要なことはやり終えているのだろう。だからまだ作業の終わらない生徒たちの喋り声でざわつくこの時間を狙って話しかけてきたのだ。ジャミルとしてはそれに応えてやる義理はないので、顔を向けることすらしない。しかしアズールも、そのような態度を取られることに慣れきっていたので、どういう対応をすればいいのかもわかっていた。「『計画』ねえ、何のことだか」「あら、それでは最近一部で噂になっているジャミル・バイパーの乱心については何の意図もないと? 本当にただカリムさんの素晴らしさに目覚めただけなのですか?」「……おい。その言い方はやめろ。今すぐ口を縫い付けるぞ」 ほらやっぱり、この従者は主人のことを引き合いに出されると沸点が異様に低くなる。どれだけつっけんどんな態度を取られても、カリムの話を出すと眉を顰めてこちらを睨みつけてくるので、とりあえずジャミルを話し合いの席に着かせたいときによく使う手段だった。毎回律義に引っかかってくれるジャミルに、あなたも難儀な人ですね、と内心で思いながら、アズールは本題に入る。「これは失礼。しかし、そうでなければ何なんですか? あなたがあのカリムさんを褒めちぎる姿なんて、ホリデーの前ですら見たことありませんでしたよ」「それがお前に何の関係がある。慈悲の心を持つなら、俺たちのことはそっとしておいてほしいね」「慈悲の心を持つからこそ見逃せません。もし友人が何かに悩まされているのであり、追い詰められて異常な行動に出たのだとすれば、救いの手を差し伸べて差し上げるのがオクタヴィネルの寮長として当然のことでしょう?」「おやアズール殿、もしかして何か勘違いしておられるのか? 俺とお前は友人でもなんでもない」「いやいや、ホリデー中に合同合宿までした仲じゃありませんか」 にこにこ。表面上は双方笑顔を浮かべているが、心の中ではお互い中指を立てているし頬を引っぱたいている。特にジャミルは、脳内でアジーム家が飼っている虎や象、大蛇を総動員して威嚇していた。対するアズールは二匹のウツボを召喚する。「とにかく、余所者は手出し無用だ。これは俺たちの問題だからな」「ということは、『問題』ではあるんですね? 俺たちということは、カリムさんも含んでいるわけだ。これはいただけない、急いでカリムさんのお話も聞かなくては」「オイ」 カリムの名前を出した途端わかりやすく不機嫌になったジャミルに、この人ほんとに面白くなりましたねとアズールは思う。アズール自身口が達者な自覚はあるが、それにしてもこの男は見えている罠に引っかかりすぎではないか。案外対人関係の駆け引きが苦手なのかもしれないと、アズール認識を改める。「カリムは関係ない、余計なことをするな」「ですが、当事者はお二人だけですし、ジャミルさんが話してくれないのならば、カリムさんからお話を聞くしかありませんね」「……はぁー、本当にお前は鬱陶しいことこの上ないな。オクタヴィネルは慈悲の精神じゃなくありがた迷惑の精神の持ち主の集まりなんじゃないか?」 反論のない罵倒は降参と同じだ。この場での勝ちを確信して、アズールはほくそ笑んだ。「わかった、言わずに余計なことをされるよりは言っていた方がいい。特にお前にはな」「信頼していただけているようで何よりです。あ、できれば経緯から動機から目的まで教えてくださいね」「全部じゃないか」「はい」 強欲である。ジャミルは軽く頬を引き攣らせ、自分の中の苛立ちに耐えた。コホン、と一つ咳払いして、そもそもの発端から話し出す。「経緯と言っても、大体カリムのせいなんだが」「それはわかってますよ。あなたならそう言うと思ってました」「というか、カリムの態度が変わらなさすぎるせいだな、俺がオーバーブロットしても、手酷く裏切られても、あいつは今までと何も変わらず俺のことを友達扱いしやがる」「ええ、そうですね。カリムさんのあの底抜けの明るさというか、楽天的すぎる性格は特に変わったところがありません」「ああ。最初はそれにムカついていたんだ」「ということは、今は違うと?」「ああ……問い詰めたんだ。なぜあんなことがあっても俺を信用するのか。そうしたらあいつ、なんて答えたと思う?」「ふむ、『俺にとってジャミルは友達だから』あたりでしょうか」「掠ってはいる。が、違う。あいつ、よりにもよって、俺のことを『優しい』とか言い出した。あいつにいじめまがいの嫌がらせをするような親族に比べたら、俺は優しいらしい」「あー……まあつまり身内に裏切られすぎて慣れちゃってたんですね」「そんなの、そんなの……マジでムカつく!」「シンプル」「俺の殺意がそこらのモブみたいな家族の悪意に負けるのか? そんなわけないだろ、こちとら17年間人生狂わされて恨んできたんだぞ? お前も親友だって言うならもっと傷付けよ」「わあプライドが高い」「だから決意したんだよ、あいつにちゃんとわからせてやるって。俺の裏切りをちゃんとあいつに刻み付けてやる。そのためにまず、あいつの心をリカバリーすることが必要だと考えた」「その結果が、現在のこれですか」「そうだ。あいつは自覚していないようだが、忘れっぽいあいつが今の今まで受けた仕打ちを覚えてるってことは、相当傷付いてるんだよ。そんな状態でまた裏切っても効果が薄いだろ。だからまずはことあるごとにあいつを褒めまくって、あいつの心を健全化する。ちゃんと俺の言葉を正面から受け止められるようになってから、ホリデーの比じゃないくらいの絶望を与えてやる」「動機はすこぶる不穏なのにやってることはカウンセラーなのめちゃくちゃ面白いですね」 アズールはついに本音を口走った。同時に授業の終わりを告げる鐘が鳴り、にわかに周囲がざわめきだす。ジャミルとアズールも、いそいそと荷物をまとめだした。「意図はわかりました。そういうことでしたら、僕も今は手出ししないでおきましょう」「今後もやめろ」「ふむ、それにしても随分根気のいいことだ。ジャミルさんのことなので心にもないことを言うのは得意でしょうが、それでもストレスは溜まるのでは?」「一言余計だ。それに、実はそこまで苦ではない」「へえ、意外ですね」 アズールは目を瞬かせた。カリムに合わせて自分を制することに限界を迎えてオーバーブロットしたジャミルなので、そのカリムに無理やりお世辞を言うことはそれこそ最も嫌なことではないかと思っていたのだ。「ああ、コツを掴めば簡単だった。あいつは学校の勉強は俺が見てやらないとてんでダメだが、それ以外では褒められるところもなくはない」「ああ、カリムさん人間関係は良好ですもんね」「そうだな。それに、どれだけ失敗してもめげないメンタルの強さは好ましいし、素直にアドバイスを聞き入れる姿勢は当主に相応しい素質だと言える。流石お坊ちゃんだから所作は綺麗だし、奥様に似て目が大きくて愛嬌がある」「……ん?」「俺が手入れしてるから髪も肌も瑞々しい美しさがあるし、はきはき明るく喋るのは誰を相手にしていても印象がいい。人と衝突しない性格も褒めるべきところだろう」「んんん?」Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! freqpopularsnackothersPayment processing Replies from the creator Follow creator you care about!☆quiet follow testudosumDOODLE後に(たぶん)アズイドになる世界線の双子会話文。現状成立してるのはアズフロだけです。ジェイドの様子が終始おかしい。「アズールに殺されてフロイドに食べられたいです」「いらね~」「おやそんなこと言わずに。僕大きいんでたくさん食べられますよ」「そういうことじゃないんだよ。終わってる倫理観と死生観に同時に巻き込もうとするなって言ってんの」「失礼な。僕はただ幸せな人生設計のお話をしただけなのに」「そこから何が始まるんだよ。人生終わるとこから始まる人生設計ってなんだよ」「だってそこが一番大事なんです。そこ以外は極端な話どうでもいいので」「設計じゃねーじゃん。何も設計できてねーじゃん」「人生何があろうとも最期にはアズールに殺されてフロイドに食べられたい」「人生のこと一本道のRPGだと思ってる?」「多少……」「思ってるのかよ。そして多少なのかよ」「一割くらいフロイドとアズールの幸せ結婚生活を応援するシミュレーションRPGだと思ってます」「残りは?」「理想のフロイドとアズールを作る育成ゲームです」「ねえー! そういう性癖はせめて自分の胸の中にしまっててくんないー!?」「そんなに寂しいことを言わないでフロイド。僕たちなんでも言い合える兄弟じゃないですか」「その兄弟に自分の屍肉食わせよ 2693 testudosumDONE十年後普通に付き合ってるジャミカリの薬指話。若干いかがわしいけどエロじゃないです。以前書いたものの続きです。前回→ https://twitter.com/testudosum/status/1317617314603282432?s=20 5168 testudosumMAIKINGジャミカリ。だいぶ前にツイートしたカリム褒め褒めジャミルの話です。例によって書きかけなのでこちらに。気が向いたら完成させます。「おはようカリム。起きてるか?」「ん、ん~……おはよ、ジャミル」「ああ、涎が垂れている。幼い子どもみたいでかわいいが、早く顔を洗った方がいい」「わかった……ん?」「カリム、聞いたぞ。魔法史の小テスト、満点だったらしいじゃないか。よく頑張ったな、流石カリムだ」「ありがとう! ジャミルがヤマを教えてくれたおかげだな! ……あれ?」「ほら、今日の弁当だ」「やったー! ありがとうジャミル! 今日も美味そうだな!」「……ふふ」「ん? 何笑ってんだ?」「いや、食べ方というか、所作が綺麗だと思ってな。ずっと見ていられる」「そうか? こればっかりは実家の教育に感謝だな」「いや、それもあるだろうが、俺はカリムの努力だと思うぞ。教育の結果だろうが、身に付いたのはカリムが頑張ったからだろう」「お、おう……」「ジャミルがおかしい」「え今更?」 体力育成の授業中、短距離走のタイムの測定が終わって、残りの生徒を待っている時間に、カリムは最近の悩み事を打ち明けた。相手は、合同授業で同時にタイムを測ったフロイドである。芝生の上に二人で座り込んで、周りに聞こえないようにこっそり話し 5031 testudosumCAN’T MAKEジャミカリ。エロですが、もう既に数ヵ月放置しているのでとりあえずここに置きます。 4252 testudosumMAIKINGアズイド。えろくなる話の導入。書く暇がないのでここに。 4069 testudosumMAIKINGアズジェイ。ここまで書いたのに忙しくてオチが書けてないからここに投げます。いずれ完成……させたい…… 8931