たばこ雄英高校の事務職は今、繁忙期でココ最近仕事が忙しく、今日も朝からバタバタとしていて やっと一息つける、と思った瞬間 「(あ、やばい、過呼吸くるかも)」と 自身の違和感を感じ取ったまみちゃん。
隣の席で仕事をしている先輩に「先輩、すみません。一段落したんで、ちょっと抜けます。」「はいよ〜!…大丈夫?」「…1本行ってきます」「おっけ、結構ヤバめね。15分ぐらい休憩しておいで。バレないようにね〜」「ありがとうございます」
そう言うと スマホとポーチとミネラルウォーターを持って外の休憩スペースへ向かう。
まみちゃんが向かったのは 喫煙所。昨今 喫煙者は昔に比べ大分減ったが、まだ嗜んでる人も居る為、雄英高校にも 外の一角に喫煙所のスペースがある。ちなみに常に空気が循環されていている為 煙草特有の臭いは無い。
スペース内に備えられているベンチに座り ポーチから煙草を1本取りだし、慣れた様子で咥え、ジッポで火を着ける。息を吸い、肺に煙を入れ、吐き出す。そして少し溜息をつく。
「(まじでやばかった…。ちょっとしんどいな)」
ゆっくりと、吸って吐くを繰り返す。
「(…吸うの久しぶりや。やだなぁ…)」
辞めたはずの煙草を吸う事で、落ち着きを取り戻そうとしている自分に呆れていた。
その後、軽く3回だけ吸い、残った分は灰皿へ捨て 余った時間はゆっくりする事にした。
ガムを噛み終え、ミネラルウォーターを飲み、そろそろ戻るか…とベンチから立ち上がろうとした瞬間、
『こんな所で 何してるんだ』
入口のドアの方から突如 重みのある低音の声が聞こえ、バッと勢いよく振り向くと、ドアに寄りかかり まみちゃんの方を見ている相澤消太の姿が。
「なんっ…で」
『あ?…あぁ、時間割の変更があって 今の時間はフリーなんだよ』
相澤は 驚いているまみちゃんに理由を話ながら 隣に腰を下ろした。
「っ、そう…なんや」
『……で?俺の質問には答えない気か?』
「や、そんな事は無いけど…」
『座ってみたかった、とか非合理的な答えは求めてないからな』
相澤は 真剣な眼差しで まみちゃんを見る。
「……癖、みたいなもんだよ」
『癖…?』
まみちゃんが 眉尻を下げながら言った言葉を 首を傾げながは復唱する相澤。
「…今は煙草辞めてるんやけどね、昔吸ってた時期に 仕事で色々あってパニック障害になって、過呼吸になって、自分を落ち着かせる時に吸ってたの。その時期は過呼吸が癖になっちゃってその度に吸ってて、でも仕事辞めて少ししたらパニック障害も落ち着いて、過呼吸も起こらなくなって、煙草も辞めれたし良かったんやけど…、1年に数回、忙しかったり、色んな事情でパニックになったりして過呼吸になりそうなときがあって、“またきそうだな” って時は吸ってるの。……今も、最近繁忙期でバタバタしてて 今日は休む暇もなくて 、さっき一段落した時に ちょっとヤバそうだな、って思ったから先輩に言って休憩貰って吸ってた。って感じ… 」
『…先輩、って アイツだろ?入社したときの…』
「そうそう、ずっと良くしてくれてる先輩」
『…この事、アイツは知ってたのか?』
「入社して すぐぐらいに 念の為言っておいたの。滅多に無いですけど、こういう時があります。って」
『そうか…』
「……ごめんね」
『ん?』
「嫌でしょ、煙草。ヒーローは身体が資本やから…」
『…俺も昔は吸ってたよ。今も潜入時は吸う時あるし』
「そうなんやぁ…。消太くん、煙草吸ってる姿 絶対似合うよね…」
『……それは喜んでいいのか…?』
「ふふっ。さーてとっ、消太くんとお話したら 落ち着いたし 戻ろっかな〜!」
ん〜っと伸びをして、立ち上がろうとした。
『……まみ』
「…ん? 、ッ」
相澤に名前を呼ばれ、目線を合わせると、相澤に唇を奪われ、深い口付けをされる。
チュパ、ジュプッ、ヂュッ、
「ンふぁ、待っ、ここ、がっこ、ぉ」
『………』
「なんっ、でっ、」
まみちゃんは必死になって止めようとするが お構い無しに続ける相澤。だが 相手は過呼吸寸前だった、ということを思いだし ゆっくり唇を離した。
『…俺が知らないことをアイツが知っている事に嫉妬した』
「…???」
息を整えながら 相澤の放った一言に、当惑した。
『後、これからは 煙草の代わりに 俺を呼べ』
「え?」
その後に言われたことにも驚くしか無かった。
『俺がいつもしんどい時は、まみが癒してくれる。だから まみがしんどい時は、俺が傍で癒したい』
「!…ありがとう」
『あぁ。よし、じゃぁ行こうか』
「ん」
もしもこの先 体調を崩したとしても 大丈夫だと安心し、ベンチから立ち上がり その場を後にした。
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