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    未完
    ギリ付き合ってる(?)レイチュリ 愛はないが愛はある
    確か2.2より前に書いた話だった気がするのでメインと矛盾あり

    ほぼ破局[やはり別れよう。これはお互いのためだ]
     二人ともあまり冷静ではない状態で解散してから今日までの三日間、慎重に脳内で議論を重ねた。別れたあとアベンチュリンはどのような奇行に走るかの脳内シミュレーション、今後の仕事に出る影響、今このタイミングで別れなかった場合次はいつまでこの関係が持つか、その期間はお互いの人生にどれだけの損失があるか。それらの計算を嘲笑うように、吹き出しの下には「メッセージの送信に失敗しました」のシステムメッセージが表示されていた。
     端末の右端を見る。電波は四本立っている。切って、付け直して、メッセージを再送信。送信に失敗しました。

     もういい。スマートフォンで送信できなくても別の端末がある。空中ディスプレイを立ち上げて同じメッセージアプリを開き、焦れったくなって今度は短く「別れる」と打ち込んだ。送信に失敗しました。
     そのメッセージが見えた途端再起動した。ここまで来たら意地だ。今日僕たちは別れて二度とよりを戻さないだろう。退会にやたら手間がかかるサブスクのカスタマーサポートに電話をかけてありったけの文句をぶつけてやったことを思い出す。あの時も「今日・絶対に・退会する」と強く誓っていた。やたら引き留めるようなことをせずすんなり退会させてくれれば何もあそこまでムキにならなかった! さてそう考えているうちに空中ディスプレイが再び明るくなる。電波よし、充電よし、バックグラウンドで何か重い動作をしていないか? タスクマネージャーよし。
     「わ」まで打てば優秀なことに「別れる」が予測変換に現れた。素早く送信ボタンを押すと、自分のアイコンから短い吹き出しが出てくる。おや、と思ったが送信中を意味する円が勿体ぶるように回っていた。やや送信に時間がかかっているようではあるが即座に門前払いをくらった訳ではない。これは大きな進歩だ。早く送信しろ。今送信しろ。はやく。通信に負けるな。別れさせろ。今すぐあの男と縁を切らせてくれ!

     時間にして一分と二十秒。無慈悲に「メッセージの送信に失敗しました」の文字が表示され、どこにもぶつけられない怒りは声になって溢れた。
    「あンのギャンブラーめ!!!」


    ほぼ破局


     普段なら長くても三日で終わるレイシオとアベンチュリンの冷戦はついに一週間目に突入した。このまま自然消滅を狙うか、あまり強引な手段は取りたくなかったがそれとなく匂わせて博識学会中にベリタス・レイシオが失恋したという噂でも流した方がいいかもしれない。あの男とどうしても別れたいのなら手段を選んでいる場合ではなさそうだ。
     そもそもの話。二人は恋人かと聞かれると、即座には頷けなかった。レイシオにとって目配せだけで自分の役割や作戦を理解できる相手はアベンチュリンだけ、そして自惚れでなければ向こうもそうだろう。プライベートで会ってもいいと思えたし、石膏頭を外した数少ない人物でもある。間違いなく特別ではある。こんな関係の友人はいない。誰にも渡さない唯一の枠をアベンチュリンに与えていたのだが、実のところ、恋愛感情は抱いていなかった。
     自己分析では、アベンチュリンに抱いてる感情の中で一番割合が大きいのは心配だと思っている。現在進行形で自分のトラウマを重ね続ける、今すぐ精神科にかかるべきおぞましい患者だ。PTSDは合併症を引き起こしやすい。精神病の温床だ。合併しまくってハイブリッドにでもなるつもりか。彼を視界に入れている限り、彼と同じ任務をこなしている限り、ずっと胸にはじっとりとした不安感があって、それを解消することが出来るのは任務の華々しい成功か彼を抱きしめることだけだったのだ。認めよう。ドクター・ベリタス・レイシオは人間とこの宇宙の行く末を憂いたことはあるが、特定の個人を心配したことはそれまでの人生で一度もない。精神科に今すぐかかるべきギャンブル依存性の人間に出会ったことはあってもだ。心配という感情はアベンチュリンの為だけに用意されていたのだ。その領域はアベンチュリンだけが独占していた。

    「心配した」

     アイラブユーと同じ文脈にある発言を。
     虚無から目覚め、ピノコニーから五体満足で帰還した男にした時、目配せだけで会話ができる唯一の男は「僕も」と返した。

     彼のことを恋人と呼ぶと正確ではないと感じるが、名前が違うだけで世間一般の恋人の条件はほぼ満たしていたし、お互いに「パートナーだ」という認識は持っていた。彼を守っていたい、導き治療しその経過を見届けたい感情が昇華できるなら別に彼のことを友人と呼んでもよかったが、多くの場合友人とセックスはしないだろう。少なくともレイシオにとってはそうだ。風呂に一緒に入ったのも飯を食わせたのも涙を拭いてあげたのもアベンチュリンだけ。だからここで「別れる」と表現するのも間違っていない。
     だいたいアベンチュリンが悪いんだと随分幼い声が頭の中に響く。心配をかけるだけかけて、どれだけ寿命が縮む思いをしているか。人間関係を良好に保つには尊重と歩み寄りが必要不可欠、そして良好とまではいかなくても維持する努力は怠らずにいたつもりだが、あまりにも僕らは不健全な関係だ。(どちらかといえば)付き合っている、のに、満たされていると感じたことが殆どない。人生の半分以上を搾取されていた彼の言動に一日一回は心を痛めている。アベンチュリンに一番効く言葉は夢の中で渡したので、今の僕にできることは即効性であり遅効性でもあるそれに全て任せてただ男の心音を確認するだけだった。あれは遠い未来、何十年も先、もしくは明日、彼が息を止める時に「自分の人生は良いものだった」と思える可能性を広げる種なので。


     あまりに危なっかしい男アベンチュリンが視界に入った途端、集中力の何割かを持っていかれる。これは任務の成功と抱擁だけが解決法だが、解決うんぬんの前に最初から問題を起こさない、つまり視界に入れないという手段を取ることもできる。レイシオの世界から出ていってもらうのはやろうと思えば不可能ではない、それなりに現実的な話だった。
     冷戦が始まって八日目のこと。

    [入金済み:200000信用ポイント]

     喧嘩の後、アベンチュリンが謝ったことは一度もない。「ごめんね、いいよ」する年齢はとうに過ぎているし、こちらも求めているのは謝罪ではなく行動を改めることだ(絶対に改めないので喧嘩はよく起こる)。代わりに、頭が冷えたらしいタイミングで向こうが一度に送信できる限度額の信用ポイントを送ってくるので、それをそのまま返すのが仲直りの儀式化していた。
     今、この信用ポイントをまるまる返せば仲直りは成立したことになる。やがてアベンチュリンはこちらの機嫌を伺うように買い物や仕事の話を振って、偶然同じ任務に向かうことになり、その空き時間には食事や娯楽に誘うのだろう。逆に、信用ポイントを受け取れば手切れ金といったところか。
     何故この男をブロックしなかったのか。せめて通知だけでも切っておけば頭の容量を食われずに済んだ。仕事の話が来たら困るからというのが第一の理由。どうせブロックした途端に通信状態が不安定になり再度読み込んでください等と言われるのが見えていたのが第二で、別れる時はキッパリとその旨を伝えておきたい性格だったのが第三。
     入金済み通知はシステムメッセージなので、既読は付かない。もう暫くは放置しても不自然ではないだろう。トーク画面を閉じて、顎に手を添えて目も閉じた。僕はこれからどう行動すべきか。

     アベンチュリンとどうしても別れたいのなら手段を選んでいる場合ではない。

     メッセージの送信は必ず失敗する。同じアプリでも他のユーザーとは問題なくチャットができたので、恐らくはアベンチュリンの豪運が働いているのだろう。別れ話だけを弾いているのか、レイシオからの小言は何一つ聞きたくないのか、アベンチュリンを愛する神による非常に高度な計算のもと何か別の条件に引っかかっているのかは分からない。目を開いて、思い立ったので実験で「別れよう」と送信したがやはり失敗した。この期に及んでまだ別れ話を拒否するか。
     自然消滅や噂の創作なんてことをしなくても、電話をかければ一発だろう。近いうちにカンパニーに顔を出す予定があるので、置き手紙をしてもいい。しばらく予定は重ならないが、直接会って話すのも手だ。もはや失敗のしようがない。何にも邪魔されずに別れ話をする想像をすると気がすく思いだった。
     心配したって仕方がないのだ。アベンチュリンを救えるのはもはやアベンチュリンだけであり、正直言って彼の人生にはもうレイシオは必要ない。居たってしょうがない。忍耐強くて彼の心の穴を見透かせる人物はそうそういないだろうが、やれることは全てやってしまったのだから。足元に落ちていた林檎を蹴って持ち上げる。
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    B1F0901

    MOURNING⚠️未完、うっすら🦚×モブ女、よく喋るモブ
    パパラッチに自分を売らせてる🦚とついに動き出した🛁のレイチュリ
    公式設定としていいか微妙ですが🦚の肖像権を🥫パニが握ってることが発覚した&自己との解釈違いのため没供養 最低限読める程度には整えましたけどでも尻切れトンボ気味&真ん中のシーンがごっそりないです
    無題 女の顔が隠れる位置を探る。編集で目線に黒い帯が引かれることは知っていたが、ほとんど被害者である彼女にできる最低限の謝罪がそれだけだったのだ。額をくっつけ、鼻頭がこすれ合う位置で息を吐くと入れ替わりにうっすらとリップとファンデーションの香りが。幼い頃ママに抱っこしてもらうとね、ファンデの香りがしたの、私はそれが好きだった──というのはひとつ前の女の話だ。母親にハグされて育った子供は皆コスメの香りを母性と繋げるのだろうか?そうとばかり思っていたが、想像していたような特別いい匂いでもなくて落胆した。マ実際に自分が探していたのはきっと母親ではなく無臭の姉の面影なのだろう。さてシャッターチャンスは与えたが、あのそそっかしいカメラマンはしっかりそれを逃さなかっただろうか。すこし目線を逸らして、カメラがあるであろう位置を見た瞬間、ちょうどタイミングよくフラッシュが焚かれる。綺麗に目線を抜かれた気がした。あまりにも光が分かりやすいと不安になってくるが、どうやら目の前の女は明日銀河のニュースに自分が取り上げられるとは全く気がついていない様子だった。
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