あまりにもしんどそうに笑うものだから思わずその身体を抱き締めた。
美冬君、無理しなくていいんだ。
辛いと泣いてもいいんだ。
それでも彼は泣かない。
もう充分、“心”で泣いたと笑うのだ
思い出は消えない。
忘れない限り消えない。
だから、忘れたくないのだと。
誰かに胸を借りる事も出来る。
でもそれをしないのは、
まだやるべき事があるのだと
彼は独りで泣く。
僕も彼女も、相棒さえも居ない場所で雨に打たれながら泣く。
僕と共に居た時も泣いたのはあの1回きり。
涙を見せるは弱味を見せるのだと妖怪達は声を揃えて言う。きっと彼も幼少の記憶が染み付いているのだろう。
嗚呼、歯痒い。知っているのに何も出来ないのは本当に歯痒い
美冬君、傍に居てやれず済まない。
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