アヒルの違い、わかりますか?地獄のとあるホテル。その一室は、外の荒れ具合とは打って変わって、穏やかな午後の空気に包まれていた。
重厚なソファに身を沈める者、ふかふかの絨毯に頬をつけて寝転ぶ者。魔法で温度を調整された部屋は静かで、どこか時間が止まっているような錯覚さえあった。
そんなまどろみを、優しくも高らかな声が破った。
「そういえば、レクちゃんはお父様とアヒルを作ってるのよね?」
ラヴェンダーだった。長い脚を優雅に組み、隣に座るレクシスへと微笑みかけている。彼女の扇子が軽く動くたび、甘い香水の香りがふわりと漂った。
「うん。色んなアヒルがあるよ」
レクシスは膝の上で両手を揃え、少し恥ずかしそうに頷いた。
「へぇ、是非見てみたいわ!」
声の調子を上げながら、ラヴェンダーは“お願いポーズ”を決める。アヒルに興味を示す人は初めてが故にレクシスは思わず目を丸くしたが、すぐに微笑みを返した。
2833