爛漫レイニー「ブラッドさん、よかったらこれ」
「ウィル……」
和菓子を差し出してきたのは元メンティーだった。出会ったときから変わらない、柔らかな雰囲気とともに。
「あたたかいお茶も用意したので、一息つきませんか? もちろん、無理にとは言わないんですが」
穏やかな笑顔を浮かべているものの、有無を言わせない雰囲気もある。今まで担当したメンティーの中でも、ともすれば一番かたくなな部分を持っている奴だと、知らないわけもない付き合い。
「……いただこう」
ペンを置いた。少し、手首が痺れていることに、そのとき初めて気づいた。……いけないな。戦えなくなる。メガネを外して、瞼を軽く抑えた。
「店に並ぶ、品物の色が、秋から冬、冬から春……グラデーションみたいに変わっていくのが好きなんです。歩いてるだけでも楽しいですよね」
8073