空を見るより俺を見ろ ふと目を覚ませば、先程まで腕の中ですやすやすと寝息を立てていたぬくもりが消えていた。
幸せボケをしていたかのようにぼうっとしていた頭をいきなりがつんと殴られたみたいにはっとなった。アッシュは飛び起きるように布団を蹴飛ばしてがばりと勢いよく起き上がる。
そのまま転がるようにベッドを抜け出せば、部屋の奥の大きな窓辺に、人影があった。
それはどたんばたんと騒がしい音を立てたこちらに驚くように振り向いて、目が合うと、男はきょとんとしたような表情と困惑した雰囲気をその身に纏って口を開いた。
「ど……どうしたの?」
「…………なんでもねぇよ」
チッ、と舌打ち混じりにアッシュはバツの悪そうに零し、がりがりと後頭部を掻く。
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