Auld Lang Syne 古き友、新しい年 なみなみとつがれたビールの泡が静かに弾ける。
その向こうから覗くのは百年に一度眺めてきた笑顔。ここはいつものパブ。だが、今日の日付は「その日」ではない。もっと言えば、今年は最後二桁が89で終わる年ではない。
あと数時間で、その最後の一桁も次の数字に歩を進めようとしている。パブは、友人たちと年越しをむかえようという客で賑わっていた。
「年越しなんてもう飽き飽きしただろう? ホブ・ガドリング」
モルフェウスが言うとホブはジョッキを置いて指先でトントンとテーブルを叩く。
「そうだなぁ、もうざっと——」
言いながら考えるように指を折っていく。
「その指一本が百年か?」
「まあそんなとこだ」
だがモルフェウスがじっと見つめているのを見て、おっと、というように人差し指を上げる。
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