悪魔と堕天使(その2) プレストンは固まったままマンデルを見つめた。
マンデルは部屋の奥、一番高い場所に設えられた椅子に腰かけていた。高い背もたれ、ゆったりしたひじ掛け、はめ込まれたルビーのような装飾が、室内の蝋燭の光にちらちらと光る。
「お前だったのか……」
なおも立ち尽くすプレストンを見つめながら、マンデルは片肘をつき、プレストンの言葉を待つように、無言でニヤリと笑った。
「……地獄に生まれた新しい王というのは、お前だったのか……?」
地獄に新しい王が生まれた―。その誕生は、天国の空をも揺らし、その事実を知らしめて行った。プレストンもその事実は知っていたが、だが、それが誰なのかは知らなかった。
部屋に足を踏み入れ、回りを見回しながら、プレストンは小さく笑いながら首を振った。
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