幸福の閾値
ファンに会いたくてもライブがやりたくても、のっぴきならない事情ってのはある。つまんねェなというのが正直な思いではあるけれど、この仕事をしていれば暇な大晦日なんてかえって珍しい。どんな波も乗りこなしてこその勝負師だ、そうだろう? だから俺はこのイベントを誰よりも楽しんでやろうと、パーティグッズを山程買い込んでウーバーイーツを時間指定でオーダーして、ホールハンズのチャットを立ち上げてたぷたぷ文字を打ち込む。
『各位
平素よりたいへんお世話になっております。
師走の候、友達の少ないおまえらにおかれましては暇を持て余しておられることと拝察致します。
つきましてはこの良き日にささやかながら忘年会を開催したく、今夜18時、ニキの家にご集合くださいますようお願い申し上げます。よろしく
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