法師陰陽師・蘆屋道満の事情 2アパート近くの駐車場に向かうと、見知らぬ高級車が停まっていた。晴明がジーパンのポケットから鍵を出し、ロックを解除する。この車は、晴明のものだった。
「乗ってください」
「お、おぉう…。失礼いたしまする」
高級車にビクビクしながら、道満は助手席に乗り込んだ。運転席に晴明が乗り、エンジンをかけた。
シートベルトを装着し、晴明は右手につけているスマートウォッチで時間を確認している。
「もう2時半ですか。家に着いたら、風呂に入ります?」
「いえ。現実を忘れたいので、もう寝ます」
「分かりました。あぁ、それと。一週間おまえの有給を申請しておきました」
「はぁ!?何を勝手に…っ」
「引っ越しの作業、必要なものの買い出し、役所に転居届を出したりと、一日では終わりませんよ」
3741