いたずらじゃなくて…「あーおーい、トリックオアトリート?」
「ハッピーハロウィン、新。はい、どうぞ」
新の言葉に葵はにっこり笑って、ジャック・オー・ランタンやおばけのイラストがプリントされた小さな包みを手渡した。
「さすが葵くん、抜かりがないな。もしお菓子がなかったらいたずらできたのに」
「いたずらって、どんな?」
「お菓子がないならキスをちょうだい? って言って、葵にキスしてもらおうと思った」
自分の返した答えに、目の前の葵の表情が寂しげに曇ったのを新は見逃さなかった。思わぬ反応に、新の心臓がどくんと跳ねる。
「……葵?」
「……それは、新にとってはいたずら?」
「ん?」
「俺は、いたずらで新とキスはしたくない。ハロウィンの決まり文句だってわかってはいるけど……それでもやっぱり嫌だな」
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