◆膝を折り尚、背を向ける②◆――――――――――――
「角都は?」
「“帰れ”と」
まぁそうだろうなと飛段は頭を掻いた。
使用人だか部下だか知らないが、対応してくれている男はどこかしら不満そうだ。
総長が拾ってきた《オモチャ》を頭と呼ぶ事に抵抗があると顔に書いてある。
「手間かけさせて、すんません」
「いえ」
勝手を云っているのは自分だからととりあえず頭を下げると男は短く言葉を返し屋敷へ戻っていった。
例え本人に会えたとしても業務時間内は《帰れ》で済まされることは分かっていたから組の若い連中には見えないように塀の陰に座る。
居ることは分かったのだから出てくるのを待てば良い。
帰るところは…一人の部屋は無くなってしまった。
時折庭から聞こえてくる部下たちのペインの悪癖と角都に対する陰口を聞きながら待つ事どれぐらい経ったのか。
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