Drink up The Ocean. 夜。
微かに冬に近づき肌寒くなった風が頬を流れて鼻頭を擽る。
きゃらきゃら、と悪戯気な彼らに湯上りの熱を奪われていくままデアンはデッキを悠然と歩いていた。
冷を好んでいる訳ではない。そもそも、好悪や価値観の基準は往古、手術台の上に捨てた。
それが果たして正解だったのか、記憶領域に残存している己の思考回路を追体験してもすでに判断基準が奪われているのだから堂々巡り。
ならば、と遠くに見える月の海を覗き込んでも干上がった海底が見えるだけで、謎の喉の渇きを潤すことはできなかった。
じくじくとアドレナリン合成回路が痛む気がして思考を中断し、艇内に足を踏み入れる。
談話室として一番広い部屋には空の民が酒やつまみを片手に語らっており、そのテーブルの1人で占領している青年がいた。
2018