21/03/07 ――聡い女。
キャスターに抱いたのは、そんな印象。
或いは、彼女は幼い見た目でありながら、実際のところ長い年月を重ねている……らしい。その人生経験の賜物なのか?
すぐさま見抜かれて。
今だってそうだ。
「綱さま」
眉を下げて、笑う。
「いったい、私を通して誰を見ておいでなのです。私はかつてを生きた者の影。私は、あなたのそのような瞳に守られるべきの……そんな存在ではないのに」
「俺は今、どんな目をしていたのだ」
「お気づきでなかったのですか?」
キャスターはそっと目を伏せる。そうすると、彼女の言う『見た目と精神年齢は一致しません』という言葉にも納得がいくような、そんな影をまとう。とはいえ、キャスターは『姿かたちに振る舞いも影響を受けるのですが』とも言っていたが。
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