Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    yo_toshite

    @yo_toshite

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    yo_toshite

    ☆quiet follow

    綱メリ メモ帳から出てきました

    ##綱メリ

    21/03/07 ――聡い女。
     キャスターに抱いたのは、そんな印象。

     或いは、彼女は幼い見た目でありながら、実際のところ長い年月を重ねている……らしい。その人生経験の賜物なのか?

     すぐさま見抜かれて。
     今だってそうだ。

    「綱さま」
     眉を下げて、笑う。
    「いったい、私を通して誰を見ておいでなのです。私はかつてを生きた者の影。私は、あなたのそのような瞳に守られるべきの……そんな存在ではないのに」
    「俺は今、どんな目をしていたのだ」
    「お気づきでなかったのですか?」

     キャスターはそっと目を伏せる。そうすると、彼女の言う『見た目と精神年齢は一致しません』という言葉にも納得がいくような、そんな影をまとう。とはいえ、キャスターは『姿かたちに振る舞いも影響を受けるのですが』とも言っていたが。

    「尊さの満ちるような、そんな目を」
    「尊さ?」
     些か、書物めいた言い回し。しかし、すぐに思い当たる……『あの御方』のことだろう。
    「隠すようなことでもないか」
    「はい?」


    「聞いてくれるか。俺の、もう過ぎた悔恨のことを」


     光るように貴い娘。幼き頃から知っていた姫。身分違いの子どもにさえ、優しく笑い掛けるひと。
     ……護れなかったこと。

    「だから、なのかもしれないな。護るということに固執するのは」
    「……大切だったのですね」

     しみじみと噛みしめるような、大切という言葉そのものをそっと手に取り、愛おしむようないたわりに満ちた声色。得体の知れない、俺の理解の埒外にあったキャスターの存在が、今、胃の奥底に落ちたようで。

    「過ぎたことだ。だが……この天覧聖杯戦争、勝ち抜いた暁には、きっと」
     あの御方の笑顔を取り戻す。
     そう呟けば、キャスターはちいさく息を呑んだ。

    「それが、綱さまの戦う理由なのですか」
    「ああ。そして、おまえを護り抜く。今度こそ、俺は大事なものを最後まで護るのだ」
     小さく、彼女の口元が動いた。しかし音は掬えず、意味も意図も汲み取れない。
    「……その、」見上げる瞳は存外に透徹。「宜しくお願いしますね。お分かりかと思いますが、私は戦闘は不得手なので……」
    「ああ」
     そんなことを気にしていたのか。構わないのに。むしろ、彼女の補助はいつも的確で、ひとりで戦うよりよほど好い。
     それを口にするには、俺は……。
    「おまえを護るために、力を尽くそう」
     
     なあ、キャスター。キャスター・メディア。

     心中だけで呼びかける。
     おまえの笑顔は、あの御方にはあまり似ていないのだな。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏🙏☺🙌💖❤💖❤💖❤👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works